裁判で無罪を証明するのはハードルが高い?起訴前に無罪証明を弁護士に依頼するべき理由とは
公開日2022/04/08
更新日2022/07/13
カテゴリ刑事事件の基礎知識ファイル
身に覚えのないことで突然逮捕された場合、「無罪を証明したい」と強く考えると思います。
しかし現実的には、刑事裁判で無罪を証明するのはかなりハードルが高いです。
今回は、裁判で無罪を証明する難しさや、起訴前に弁護士へ依頼すべき理由を解説していきたいと思います。
【この記事のポイント】
- 裁判で無罪を証明するハードルの高さがわかる
- 起訴前に無罪の証明をするべき理由がわかる
- 弁護士に無罪証明を依頼するメリットがわかる
えん罪は絶対に認めてはいけないこと
えん罪で逮捕されることは、本来絶対にあってはならないことですが、実際には誰にでも起こりえることです。
えん罪で逮捕されてしまった場合、警察等の不当な取り調べによって、精神的に追い込まれてしまい、虚偽の自白をしてしまったり、「悪いようにはしないから」と言われ、事実ではない自白調書にサインしてしまったりすることが考えられます。
自白調書にサインをしてしまうと、「罪を認めた」ということになり、後になって無罪を主張することは極めて困難になります。
刑事裁判は99パーセントの確率で有罪になるので無罪証明が困難
身の潔白を証明したい場合、刑事裁判での無罪証明を考える方が多くいらっしゃると思います。
しかし結論からいうと、刑事裁判で無罪を主張したとしても、約99パーセントの確率で有罪判決がくだります。
刑事裁判において、「疑わしきは被告人の利益に」という言葉があります。
この言葉は、裁判所が検察の提示した証拠だけで有罪の確証が得られなかった場合、疑いがあっても被告人の有利になるような判断を行うということを意味します。
しかし、現実として検察官が起訴し、刑事裁判となった場合、前述のとおり99パーセントの確率で有罪判決を受けてしまいます。
刑事裁判の有罪率の高さは、検察官の起訴の判断と密接な関係があります。
起訴とは簡単にいうと、検察官が裁判所に対して刑事裁判の開廷を提起することです。正式には公訴の提起といい、検察官しか持っていない権限です。
大して証拠もないのに起訴すると検察官の信用を失くしてしまいかねません。したがって、検察官は、犯罪行為があったと確証に足る証拠等が無いと起訴しないのです。
見方を変えれば、刑事裁判で無罪主張をするよりも、起訴前の段階で検察官に対し、「罪を犯していない」と主張した方が無罪放免となる可能性が高くなります。
無罪証明は起訴される前に主張するべき
無罪証明は、刑事裁判の場で裁判官に主張するよりも、起訴される前に検察官へ主張すべきです。
なぜなら、刑事事件の起訴率は3割程度のため、有罪確率が9割以上である刑事裁判の場で無罪を主張するよりも、嫌疑を晴らせる可能性が高いといえるからです。
検察官に無罪証明をしたい場合、「嫌疑なし」もしくは、「嫌疑不十分」で不起訴処分を目指す必要があります。
「嫌疑なし」とは、犯罪の疑いが晴れたことを指します。対して、「嫌疑不十分」は捜査機関が起訴するに足る確証を得られなかった場合を指します。
「嫌疑なし」もしくは「嫌疑不十分」で不起訴処分を得るには、検察官の取り調べ時や意見書で嫌疑を晴らしたり、疑いに足る証拠がないということを訴えたりする必要があります。
検察官に対しこのような訴えを行い、弁護士に相談せず、「嫌疑なし」や「嫌疑不十分」を得ることはかなり難しいです。
無罪証明を弁護士に依頼するメリット
無罪証明を弁護士に依頼するメリットとして、次のようなものが挙げられます。
- 取り調べ時等の対応をアドバイスしてくれる
- 検察官に不起訴を訴える意見書を提出してくれる
- 刑事裁判になったとしても無罪判決を受けられるよう最大限行動してくれる
具体的にどのようなメリットなのか確認していきましょう。
取り調べ時等の対応をアドバイスしてくれる
無罪証明を弁護士に依頼するメリットとして、取り調べ時等の対応を弁護士がアドバイスしてくれる点があります。
取り調べ時の立ち振る舞いや受け答え、不当な取り調べを行われたときの対応方法等を接見のときにアドバイスしてくれるので、自分が何をすべきなのかがわかります。
また、実際に捜査機関から不当な取り調べを受けた際には、警察や検察に抗議を行ってくれることも大きなメリットといえるでしょう。
検察官に不起訴を訴える意見書を提出してくれる
無罪証明を弁護士に依頼するときのメリットのひとつとして、検察官に不起訴を訴える意見書を提出してくれることも挙げられます。
事件当時について被疑者に聞き取りを行い、聞き取りを裏付ける証拠として目撃者の証言等を集めたうえで、検察官に「嫌疑がない」、もしくは「嫌疑が不十分である」という意見書を提出します。
その他にも検察官の勾留請求に対し、裁判所へ意見書を作成して、身柄拘束から解放されるための働きかけも行ってくれます。
このように被疑者が受ける不利益を最小限にとどめようとしてくれる点もかなりのメリットといえます。
刑事裁判になったとしても無罪判決を受けられるよう最大限行動してくれる
無罪証明を弁護士に依頼した場合、刑事裁判になったとしても、無罪判決が受けられるよう引き続き弁護活動を行ってくれます。
刑事裁判になる前に無罪を証明できるのが一番ですが、状況によっては起訴されてしまうケースもあります。
このような場合でも、被告人の利益を第一に考え、法廷の場で無罪の主張を行ってくれます。
無罪を証明したいなら早い段階で弁護士への依頼を検討しよう
無罪を証明したい場合は、早い段階で弁護士への依頼を検討しましょう。早期に依頼することによって、警察等の捜査機関からの不当な取り調べを受ける可能性がより低くなります。
虚偽の自白や無理やり自白を迫られる等の不当な取り調べは、弁護士が付いていないと、発生する可能性が高くなります。早期に弁護士へ依頼することによって、不当な取り調べを避けることができます。
加えて、虚偽の自白を未然に防ぐことによって、「嫌疑なし」や「嫌疑不十分」で不起訴処分を得られる可能性も高くなります。
まとめ
今回は無罪証明の難しさや弁護士に無罪証明を依頼するメリットについて解説してきました。
いわれのない罪で捕まった場合、どれだけ早く弁護士に依頼するかによって無罪を証明できる可能性が変わります。したがって、迷わず刑事事件に精通した弁護士へ相談することが、無罪証明にとって何より重要となります。
この記事の監修者
さくらレーベル法律事務所櫻井 唯人弁護士
【所属】第二東京弁護士会
「出会う弁護士によってその後の人生が変わる」という信念のもと、多くの案件に携わってきました。特に刑事事件、犯罪被害者の支援、交通事故対応に注力しており、その他、どんな案件にも迅速・丁寧に対応します。
「刑事事件の基礎知識ファイル」に関する新着記事
「刑事事件の基礎知識ファイル」に関する人気記事
カテゴリから記事を探すこちらから記事を検索できます
キーワードで記事を探す
新着記事
-
執行猶予とは 「執行猶予という言葉をニュースなどでよく耳にするけれど、執行猶予付きの有罪判決は執行猶予が付かない有...
-
あおり運転をしてしまった⁉:弁護士による法的対応ガイド 「あおり運転のニュースを目にすることがあるが、これまでの自分の運転行為はあおり運転に該当していないだ...
-
詐欺罪とは | 刑罰や有罪判決の影響をわかりやすく解説 詐欺罪とは何か?詐欺罪とは、刑法第246条に規定されている犯罪で、人を欺いて財物を交付させたり、財...
-
起訴とは|意味や起訴前後の流れ、対応方法を解説 「起訴という言葉を聞くことがあるけれど、具体的にはどういう意味なんだろう?」起訴という言葉そのもの...
-
書類送検とは | 弁護士が導く安心ガイド テレビの報道などで、「名誉毀損の容疑で書類送検されました」といった言葉を耳にすることがあると思います...
人気記事
-
【弁護士監修】万引きで逮捕!?万引きしたらどうなる? 万引きは何罪になるのか万引きとは、買い物客のフリをしてスーパーやコンビニなどのお店から代金を払わず...
-
詐欺罪とは | 刑罰や有罪判決の影響をわかりやすく解説 詐欺罪とは何か?詐欺罪とは、刑法第246条に規定されている犯罪で、人を欺いて財物を交付させたり、財...
-
家族が窃盗罪で逮捕された | その後の流れと保釈と釈放 突然警察から電話があり、家族が窃盗罪で逮捕されたと言われたら動揺し、どう対応すればよいのかわからない...
-
【物損事故を起こした!】物損事故で当て逃げしたら器物破損の罪になるのか 車やバイクなど車両を運転し、駐車場から出るとき、あるいは交差点に進入するときなどに、誤って他の車や建...
-
【弁護士監修】傷害罪の罰金は最大いくらになるのか?支払わなかった場合のペナルティはあるの? 傷害事件を起こしてしまった場合、事件の内容によっては罰金刑を科されることがあります。もし、傷害事件...
近くの弁護士を探す