刑事事件に関する法律相談サイト「刑事事件弁護士ファイル」

刑事事件弁護士ファイル

記事

刑事事件の基礎知識ファイル

前科とはどんなタイミングでつくの?前科がつくデメリットとつかなくするための対処法とは?

前科とはどんなタイミングでつくの?前科がつくデメリットとつかなくするための対処法とは?

公開日2022/03/29

更新日2022/08/12

カテゴリ

弁護士法人ユア・エース正木 絢生弁護士

一般的に前科がつくと、将来的にかなりの不利益を被るようなイメージがあります。とはいえ、どのようなタイミングで前科はつくのかわからない方は少なくないと思います。

今回は前科がつくタイミングや具体的にどのようなデメリットがあるのか等を詳しく解説していきたいと思います。

【この記事のポイント】

  • 前科のつくタイミングがわかる
  • 前科がつくデメリットがわかる
  • 前科をつけないための対処法を知れる


前科はどのタイミングでつくの?どんな罪でつくの?

前科は、一般的に「犯罪をしたひとにつくもの」という意味でとらえられていると思います。

具体的にいつどのようなタイミングで前科がついて、前科がつくとどのような不利益があり、いつまで続くのか等をすぐに答えられる方は多くないでしょう。

前科は逮捕ではなく有罪が確定した時点でつく

前科は、刑事裁判で有罪が確定した時点でつきます。

逮捕、勾留されたとしても、不起訴処分になった場合には、前科はつきません。また、検察に起訴されたとしても、裁判で有罪の判決が下されなければ、前科がつくことはないです。

ただし、検察に起訴された時点で有罪になる可能性は非常に高い点を留意する必要があります。

前科は罪の内容に関係なくつく

前科は罪の内容に関係なくつきます。つまり、懲役や禁錮刑等の実刑だけではなく執行猶予や罰金刑、1万円未満の財産刑である科料でも有罪が確定している以上、前科がつくのです。

軽微な犯罪の場合、略式起訴といって法廷で裁判を開かず、書面による審理で有罪が確定するケースがあります。略式起訴は、裁判所から「略式命令」という書面が届き、内容に沿った罰金や科料を納めれば刑罰を受けたことになります。

したがって、有罪判決を受けたという実感がなく、前科はついていないと思う方もいるかもしれません。しかし実際には、罰金や科料でも前科はつくので勘違いしないようにしてください。

前科の情報は消えることなく警察等で保管される

前科の情報は消えることなく警察等の捜査機関に情報がずっと保管されます。捜査機関は、前科の情報を一般公開することはありませんが、記録された情報は、そのひとが死亡するまでずっと保管されます。

前科の情報は、犯罪予防や別の刑事事件の捜査に使用されるので、警察が別の刑事事件で関与を疑っている場合、連絡がきたり、任意同行を求められたりするケースもあります。

前科がつくデメリットとは?

前科がつくデメリットとして、次のようなものが考えられます。

  • 一定の期間職業制限がある
  • 国外への移動を制限される可能性がある
  • 会社を解雇、学校を退学処分になる可能性がある
  • 就職活動で不利になる場合がある
  • 再犯時、罪が重くなる確率が高くなる

それぞれ詳しく確認していきましょう。

一定の期間職業制限がある

前科のデメリットとして、職業によって、一定の期間制限が付く可能性があります。制限がある職業とは次のとおりです。

職業資格制限、資格制限の期間
医者・歯科医師罰金刑以上に処された場合、厚生労働省から3年以内の医業の停止や免許の取消しに処される場合がある。
看護師・助産師等罰金刑以上に処された場合、厚生労働省から3年以内の業務の停止や免許の取消し等の処分が下される可能性がある。
薬剤師罰金刑以上に処された場合、厚生労働省から3年以内の業務停止や免許の取り消し等の処分が下される可能性がある。
歯科衛生士罰金刑以上に処された場合、厚生労働省から3年以内の業務停止や免許の取り消し等の処分が下される可能性がある。
獣医罰金刑以上に処された場合、農林水産省から一定の期間の業務の停止や免許の取消しの処分が下される可能性がある。
栄養士等罰金刑以上に処された場合、1年以内の期間を定めて栄養士・管理栄養士の名称の使用の停止や免許の取消し等の処分が下される可能性がある。
調理師罰金刑以上に処された場合、免許の取り消しの処分が下される可能性がある。
国家公務員人事院規則に定める場合を除き、執行猶予を含め禁錮以上の刑に処された場合、失職する。また、執行猶予期間の満了、もしくは刑を終えるまで同じ職に就くことはできない。
地方公務員自治体の条例等に特別な定めがない限り、執行猶予を含め禁錮以上の刑に処された場合、失職する。また、執行猶予期間の満了、もしくは刑を終えるまで同じ職に就くことはできない。
教師、幼稚園教諭禁錮以上の刑に処された場合、教員免許の効力を失う。また、執行猶予期間の満了、もしくは刑を終えるまで同じ職に就くことはできない。なお禁錮以下の刑であっても、信用失墜行為とみなされた場合には、免職や停職、減給処分を受けることがある。
保育士禁錮以上の処分、または児童福祉法で罰金刑以上を科された場合、登録抹消される可能性がある。また、執行猶予期間の満了、もしくは刑を終えてから2年以内は同じ職に就くことはできない。
公認会計士禁錮以上に処された場合、登録を抹消される。刑の執行の完了、執行猶予の期間満了から3年経過するまで再登録不可。公認会計法に違反した場合は、5年経過するまで再登録できない。
司法書士禁錮以上に処された場合、登録を抹消される。刑の執行の完了、執行猶予の終了から3年経過するまで再登録不可。
行政書士禁錮以上に処された場合、登録を抹消される。刑の執行の完了、執行猶予期間の満了から3年経過するまで再登録不可。
社会保険労務士禁錮以上に処された場合、登録を抹消される。刑の執行の完了、執行猶予期間の満了から3年経過するまで再登録不可。
社会福祉士禁錮以上に処された場合、登録を抹消される。登録抹消、刑の執行の完了、執行猶予期間の満了から2年経過するまで再登録不可。
土地家屋調査士禁錮以上に処された場合、登録を抹消される刑の執行の完了、執行猶予期間の満了から3年経過するまで再登録不可。
貸金業者執行猶予を含む禁錮以上の刑に処された場合、貸金業登録の抹消をされる。刑の執行の完了、執行猶予の終了から5年経過するまで再登録不可。
警備員禁錮以上の実刑判決を受けた場合、刑執行後、5年経過するまで警備業の営むことや行うことができない。
取締役禁錮以上の刑が確定した場合、欠格事由にあたり解任となる可能性がある。


表をご覧いただければおわかりのとおり、前科がある場合、さまざまな職種で制限がかかります。

また、法律上復職できると記載があったとしても犯した罪によって現実的に復職できない職種もありますので、そのような職種に就いていた場合には、いかに前科をつけないようにするかが大変重要となります。

国外への移動を制限される可能性がある

前科がつくデメリットとして、国外への移動を制限される可能性があります。

国外への移動は、パスポートが必要です。日本のパスポートは外務省が発行権限を持っており、自分の前科が、旅券法の次の項目に該当する場合、パスポートの発行を拒否される可能性があります。


(一般旅券の発給等の制限)

死刑、無期若しくは長期二年以上の刑に当たる罪につき訴追されている者又はこれらの罪を犯した疑いにより逮捕状、勾引状、勾留状若しくは鑑定留置状が発せられている旨が関係機関から外務大臣に通報されている者

禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者

第23条(※)の規定により刑に処せられた者

旅券若しくは渡航書を偽造し、又は旅券若しくは渡航書として偽造された文書を行使し、若しくはその未遂罪を犯し、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百五十五条第一項又は第百五十八条の規定により刑に処せられた者


旅券法第23条は、パスポートの不正利用(偽造、他人への貸与等)に関して定められています。


このように、懲役・禁錮2年以上にあたる罪で検察から起訴されていたり禁錮2年以上の前科があったりするひとに関しては、パスポートを発行してもらえない可能性があります。

また、日本でパスポートを発行してもらえたとしても、海外旅行や海外赴任等の行き先によっては、入国拒否されてしまうケースもあります。

特にアメリカは入国に関して厳しく、罰金刑等、比較的軽い刑罰を受けた場合でも、ビザなしで渡航することはできません。

ビザの申請には数か月の時間を要する可能性があり、判決謄本等の書類も取り寄せる必要があり、煩雑さが増します。ビザなしで海外に行けない可能性があるのは、デメリットのひとつと言えるでしょう。

会社を解雇、学校を退学処分になる可能性がある

前科がつくデメリットとして、会社を解雇されたり学校を退学処分となったりする可能性があります。

前科の情報を警察等の捜査機関が会社や学校に通知することはありません。ただし、ネット等に逮捕や有罪判決の情報が載せられていた場合、前科があることがバレてしまう可能性があります。

解雇とならなくても、自主退職や自主退学を勧められて、会社や学校に居づらい雰囲気になることが予想されます。

就職活動で不利になる場合がある

前科がつくと就職活動で不利になる場合があります。就職活動をすると、履歴書や経歴書に賞罰欄という箇所ある場合があります。

この箇所に実際は前科があるにも関わらず、虚偽の申告をしてしまうと、後に前科がバレた場合、経歴詐称として解雇されるケースがあります。また、面接時に前科の有無を問われた場合に、嘘をついても同様です。

再犯時、罪が重くなる確率が高くなる

前科がつくと、再犯時に罪が重くなる確率が高いです。
法的な前科の消滅は、罰金刑以下は執行が完了してから5年、懲役や禁錮の場合は執行が完了してから10年です。また、執行猶予がついていた場合は、執行猶予の期間の満了によって前科による制限が無くなった状態となります。

したがって、刑の執行終了後5年以内に犯罪行為をした場合、「更生していない」「反省していない」とみなされて、前科がなければ執行猶予がついてもいいような犯罪でも実刑判決となったり刑期が長くなったりします

更に付け加えれば、執行猶予期間中に罰金刑以上の犯罪行為をした場合、執行猶予が取り消しとなり、実刑を食らってしまうこともありますので注意が必要です。

前科をつけないためには起訴されないことが大切

前科がつくと、さまざまな側面でデメリットが発生します。前科がつくデメリットを回避するためには、検察に起訴されないことが非常に大切です。どうして起訴されないことが重要なのか確認していきましょう。

日本の刑事事件は起訴されたら約99パーセントが有罪

日本の刑事事件は、起訴されると約99パーセントが有罪となります。そのため、起訴後に前科をつけたくないからといって、無罪の主張をしても通らないことがほとんどです。

したがって、前科をつけないためには、起訴を回避することが非常に重要なのです。

起訴後に前科がつくのを回避するのは非常に難しいので、前科をつかなくするためには起訴前に検察への働きかけが大切になります。

被疑者を起訴する権限は、検察だけが持っています。したがって、担当の検察官に、「不起訴が妥当な処分である」と考えてもらえるようにすることが、前科がつくのを回避する有効な手段となりえるのです。

前科をつかないようにするためには弁護士に相談すべき

前科をつかないようにするためには、弁護士へ相談し、依頼することが得策です。検察官に対する不起訴の働きかけや、無罪判決を勝ち取ることは、一般の方の法知識では難しいからです。弁護士に依頼すれば、前科がつかないように最大限の対応を行ってくれます。

まとめ

今回は前科とはどのようなタイミングでつくのか、また前科のデメリットやその対処法について解説していきました。前科がつくと、場合によって日常生活にさまざまな支障がでる可能性があります。したがって、前科がつく前に不起訴処分等を得られるよう、弁護士への相談や依頼を検討しましょう。

この記事の監修者

弁護士法人ユア・エース正木 絢生弁護士

【所属】第二東京弁護士会所属
刑事事件の弁護は、迅速な対応することによって、早期の身柄釈放や、執行猶予、減刑が望めます。
しかし、それを実現するためには、前提としてご依頼者の方と弁護士に信頼関係がなければなりません。
理想である依頼者の方に安心してもらえる弁護士になれるよう日々尽力しておりますので、刑事事件でお困りの際はご連絡ください。

「刑事事件の基礎知識ファイル」に関する新着記事

「刑事事件の基礎知識ファイル」に関する人気記事

カテゴリから記事を探すこちらから記事を検索できます

キーワードで記事を探す

新着記事

人気記事

近くの弁護士を探す