刑事事件に関する法律相談サイト「刑事事件弁護士ファイル」

刑事事件弁護士ファイル

記事

刑事事件の基礎知識ファイル

【弁護士監修】刑事事件の示談書は自分で作成できるのか?

【弁護士監修】刑事事件の示談書は自分で作成できるのか?

公開日2022/07/07

更新日2022/08/03

カテゴリ

佐々木法律事務所佐々木 幸駿弁護士

刑事事件を起こしてしまった場合、被害者側と示談交渉を行うことが少なくありません。

被害者側との示談交渉は、弁護士が加害者の代理人となって行うのが一般的ですが、「費用を少しでも抑えたい」という想いから、刑事事件の示談書を自分で作成しようと考えている方もいるかと思います。

そこで今回は、刑事事件の示談書は自分で作成するリスクと弁護士に依頼した方がよい理由について解説していきます。

【この記事のポイント】

  • 示談書を自分で作成できるのかがわかる
  • 示談書を自分で作成できるケースが分かる

刑事事件の示談書を自分で作成することは困難

刑事事件で被害者側と結んだ示談書は、検察官や裁判官が不起訴処分や刑罰の軽減を判断するにあたってとても重要な書類です。

示談書を作成するには、被害者側と示談を成立させる必要があります。

しかし、加害者本人や加害者家族が直接被害者側と示談を行うのは以下のような理由で困難です。

■加害者や加害者関係者自身が示談を行うハードルの高さ

①被害者の連絡先を知ること自体が難しい

②被害者との直接の示談交渉はスキルが必要

③示談内容を示談書にするには法的知識が豊富である必要がある

理由①被害者の連絡先を知ること自体が難しい

刑事事件の示談は、加害者本人やその家族が示談交渉を行うために必要な連絡先を入手し、連絡すること自体のハードルが非常に高いです。

まず加害者が逮捕や勾留されている場合は、身柄が拘束されているので、被害者と直接示談を行うのは物理的に不可能です。

加害者本人が示談交渉できる状態でなければ、その家族が代わりに示談をすればいいとお考えの方もいるかもしれませんが、こちらもかなり難しいです。

なぜ困難なのかというと、これにはちゃんとした理由があります。

加害者やその家族が被害者側と示談交渉したい場合、まずは被害者の連絡先を知る必要があります。

被害者の連絡先を知るには、警察や検察等の捜査機関に聞く必要があります。

しかし、捜査機関は、被害者の連絡先を加害者本人に教えることはほとんどありません。

加害者本人に被害者の情報を教えれば、加害者が被害者に対して報復をしたり、証拠隠滅のために危害を加えるおそれがあるからです。

そのため、元から被害者と知り合いで連絡先を知っている状態でなければ、示談交渉自体を行うことができないことが多いのです。

理由②被害者との直接の示談交渉はスキルが必要

被害者と連絡が取ることができ、話し合いのテーブルにつければ示談が成立するといわれれば、そういうわけではありません。

被害者と示談交渉ができるということは、スタート地点であって、その先被害者から許しを得られるよう交渉していく必要があります。

事件の内容によっては、被害者自身やその家族が、加害者に対して憎しみや怒り、恐怖、許せない感情等を持っていることは想像に難くありません。

このような状況で、双方の納得のいく内容で示談を成立させるには、相当の交渉スキルが必要になります。

示談交渉では、被害者側の感情を傷つけないよう、交渉を始めるタイミングや交渉の進め方、意見の出し方、交渉のまとめ方等、しっかりとした配慮が不可欠です。

少しでも方法を誤れば、再び交渉の席についてもらえなくなる可能性があり、慎重に進めねばなりません。

理由③示談内容を示談書にするには法的知識が豊富である必要がある

刑事事件における示談の成立は、「被害者から許しを得た」ということを、検察や裁判所に示すことによって、情状酌量してもらえる可能性のある重要なことです。

示談は契約の一種なので、双方がその内容に合意していれば口約束でも成立します。

しかし、検察や裁判所に「示談が成立した」ことを示したり、後に被害者とのあいだでトラブルにならないために「示談書」を作成することが大切です。

示談書は当事者が合意した内容を法的に有効な書面にしなければならず、豊富な法知識を必要とします。

そのため、一般の方が示談書を自力で作成するのは難しいといえます。

示談書を自分で作成できるケースとは

基本的に弁護士からの協力を得ず、示談交渉や示談書を自分で作成するのは、非常に難しいと言わざるを得ません。

ただし、状況によっては自力で解決できる可能性のあるケースもあります。

被害者が知人や友人だったとき

被害者が知人や友人だった場合、自分で示談書を作成できる可能性があります。

知人や友人であれば、捜査機関を介さなくても、被害者に直接連絡が取れる手段があるので示談交渉の場につくハードルが下がります。

また、加害者と被害者の関係が親しい間柄であれば、事情を考慮してくれ示談が成立する場合もあります。

ただし、親しい間柄であっても被害者の悪感情が強い場合には示談の成立は難しいですし、示談書を当事者同士で作成した結果、後にトラブルとなるリスクがあることも留意してください。

警察等に届け出が無く、まだ事件化していないとき

被害者が被害届を出しておらず、警察等に事件が認知されていない場合、直接交渉を行える可能性があります。

事件化する前に示談を成立させることで、刑事処分が科される可能性は大幅に減少します。

示談を自力で行ったり、示談書を自分で作成するリスク

加害者本人が示談交渉を自力で行ったり、示談書を自分で作成したりするとどのようなリスクがあるのでしょうか。

リスク①示談書の内容に不備がある

示談書を自分で作成するリスクとして、作成した示談書に不備が生じる可能性があることです。

示談書の作成には豊富な法的知識が必要です。

インターネット上に刑事事件の示談書のテンプレートを使うから問題ないと思う方もいるかもしれませんが、示談書に記載する内容は事案ごとで異なります。

さらに十分な知識がないまま内容を理解しないままに示談書を作成すると、後になって大きなトラブルに発展するリスクがあるのです。

リスク②被害者との示談交渉で違法行為をしてしまう

示談交渉を自分で行うリスクとして、示談を成立させたいと思うあまり、違法行為をしてしまうことがあります。

示談交渉の成立には加害者・被害者双方の合意が必要です。

そもそも被害者側は示談に応じる義務はありません。

したがって、加害者が示談を求めても、被害者側が応じてくれなかったり、当事者で合意に達せず示談不成立となったりするケースが考えられます。

このようなときに示談に応じない被害者に対して、危害を加えるような言動をとり、示談を無理やり成立させようという行為は、違法行為です。

被害者に許してもらうために示談交渉を行うはずが、被害者側を脅迫・強要してしまっては元も子もありません。

示談の交渉の仕方・進め方を間違えると、かえって状況が悪化する可能性もあるのでご注意ください。


刑事事件の示談書の作成は弁護士に頼るべき

被害者との示談交渉や示談書の作成等は、弁護士に依頼することをおすすめします。

まず、弁護士に依頼した方が交渉を行う機会が得られやすいことが挙げられます。

捜査機関が加害者本人に被害者の連絡先を教えることはありません。

しかし、加害者の代理人である弁護士であれば、被害者に承諾を得たうえで、捜査機関から被害者の連絡先を教えてもらうことができます。

また弁護士は、法律の専門家であり、交渉を行うプロでもあります。

刑事事件の経験豊富な弁護士に依頼することで、被害者の感情に配慮した適切な対応ができるため、示談を成立しやすいといえます。

過去の事例をもとに示談金の目安等も十分に理解しているため、過不足のない適当な額を提示することができます。

まとめ

今回は、示談書を自分で作成する難しさやリスクについて解説しました。

刑事事件の示談書は、被害者に示談の交渉の場に着いてもらうところからはじまります。

交渉の場に着いてもらうことや、交渉を行い、法的に有効な示談書を作成するのは多くのハードルをクリアしていかなければなりません。

また、示談が成立するタイミングによって、刑事事件の今後の流れも異なってきますので、お困りの場合には刑事事件に精通した弁護士に相談しましょう。

この記事の監修者

佐々木法律事務所佐々木 幸駿弁護士

【所属】札幌法律事務所
刑事事件の加害者となった場合、早期釈放や不起訴処分、刑の減軽を得るには、被害者の方との示談交渉が大切です。
示談交渉は被害者の方の心情を考慮しながら進めなければならず、自力で行うことは困難といって良いでしょう。
佐々木法律事務所は加害者とのコミュニケーションを重要にしており、札幌市を中心に広く弁護活動を行っています。
お困りの際は、当事務所にご連絡ください。

「刑事事件の基礎知識ファイル」に関する新着記事

「刑事事件の基礎知識ファイル」に関する人気記事

カテゴリから記事を探すこちらから記事を検索できます

キーワードで記事を探す

新着記事

人気記事

近くの弁護士を探す