書類送検とは | 弁護士が導く安心ガイド
公開日2023/12/18
カテゴリ刑事処分の種類と解説
テレビの報道などで、「名誉毀損の容疑で書類送検されました」といった言葉を耳にすることがあると思います。
ここでは、書類送検とはどういったことなのか、そして自身が書類送検されることになった場合の対応などについて解説していきます。
書類送検とは
まずは書類送検とはどういったことなのかについてみていきます。
書類送検の意味と一般的な流れ
書類送検とは、在宅事件で警察が書類を検察に送ることをいいます。
逮捕されてしまった場合には、書類だけでなく、その被疑者(俗にいう容疑者)の身柄と、事件の書類の両方が、検察官に送られることになります。
しかし、逮捕されずに在宅事件として処理されている場合には、身柄は検察官に送られず、書類だけが検察官に送られることになります。
この手続きを報道では、書類送検と呼んでいるのです。
事件の発生後、犯人として特定された被疑者に逮捕の理由や必要性がなく、逮捕されなかった場合、その事件について警察の捜査が完了することで、書類送検されるという流れになります。
加害者が知っておくべきポイントとは?
事件の加害者として、知っておくべきポイントとしては、書類送検は刑事事件の1つの手続きに過ぎず、その後処分を受ける可能性があるということです。
逮捕や送検といった言葉が大々的に報道されていることから、こうした手続きが刑事事件の最後の手続きであると考えている方もいるでしょう。
しかし、逮捕や送検といった手続きの後、検察官が起訴するか否かという判断を下し、起訴されると刑事裁判を受けることになるというものが、刑事事件の流れとなります。
そのため、逮捕や送検されても、前科はつきませんが、その後起訴され、有罪判決を受けることもあることから、適切な対応を考える必要があります。
書類送検に至る一般的な犯罪の種類
ここでは書類送検がなされる犯罪とはどういったものなのかについてみていきます。
書類送検に繋がる代表的な犯罪の例示とその背景
書類送検は、身柄を拘束されず、在宅で事件の手続きを進めることから、逮捕の理由と必要性がない被疑者であることが書類送検の条件となります。
そのため、犯罪の種類だけで書類送検に至るかが決まるわけではありません。
しかし、統計上は、窃盗罪の場合に書類送検されることが多くなっています。
この背景としては、被害額が小さく、示談が成立している場合には、予想される処分が軽く、逃亡のおそれがないと判断されることが多いことがあると考えられます。
犯罪の程度や状況による書類送検の可能性について
刑事事件においては、警察が捜査した場合、微罪処分とならない限りは送検することが原則となっています。
そのため、ごく少額の窃盗といった微罪処分になるものでない限りは、書類送検されることになります。
書類送検のリスクと影響
ここでは、書類送検された場合にどういったリスクがあるのか、そしてどういった影響が出てしまうのかについてみていきます。
書類送検がもたらす影響(法的、社会的、個人的)
まず、書類送検されたことが報道されてしまうことがあります。
これによって、家族や職場等に事件を知られてしまうおそれがあります。
また、書類送検されると検察がさらに捜査をし、起訴するか否かの判断を行うことになります。
そのため、起訴されて刑事裁判を受けることになってしまうことがリスクとなります。
そして、刑事裁判を受けることになると、出廷するために職場を休まなくてはならなくなるといった影響が出る、また有罪判決を受けてしまうと解雇されてしまうおそれもあります。
加害者側のリスクマネジメントの考え方
書類送検は、それ自体が悪影響のある手続きとなりますが、その後逮捕されてしまうこともあり、さらには刑事裁判で有罪判決を受けて前科が付いてしまうなど、より大きな悪影響が生じかねません。
そのため、前科が付かないようにリスクマネジメントしていくことが大切になります。
具体的には、被害者の方との示談交渉を進めること、少しでも有利になるように証拠を収集することが考えられます。
また、検察官に取り調べのために呼び出しを受けるということもありますが、どうしても都合が付かない場合にはきちんとそのことを伝えて調整してもらうなどして、真摯に対応することも大切です。
書類送検への対応策と弁護士の役割
ここまで書類送検とは何か、そしてそのリスクについてみてきました。
ここからは、書類送検されてしまった場合の対応策についてみてきます。
書類送検への適切な対応策やアドバイス
書類送検される段階では、警察での捜査は終了し、起訴するか否かの決定権を持つ検察に、その判断を委ねる状態に至っています。
そのため、書類送検の対応としてできることとしては、不起訴処分を下すよう働きかけていくこととなります。
具体的な対応策としては、被害者の方との示談交渉と証拠収集が挙げられます。
まず、示談とは、被害者の方との間の民事的な紛争解決のことをいいます。
刑事事件では、加害者が犯した罪を警察や検察が追及していく側面と、被害者の方が自身に生じた損害の賠償を加害者に求める側面があります。
このうちの後者を解決する方法が示談となります。
示談を成立させることで、被害者の方は被害届や告訴を取り下げ、被害者の方が加害者を許したことになるため、不起訴処分を得やすくなります。
また、証拠収集をして、加害者の行為の程度が低かったことなどを証明することで、不起訴処分を得やすくなります。
さらに、薬物犯罪、性犯罪などの場合には、更生プログラムを受講する、治療を受けるといったことも効果的です。
自身の罪に向き合い、再犯防止に向けて取り組んでいるということも、不起訴処分につながりやすい事情といえます。
加害者側弁護士の果たす役割と重要性
加害者側の弁護士の役割としては、書類送検とはどういったことか、そしてその後の手続きの流れ、さらには対応策といった法律的なアドバイスができることがまず挙げられます。
刑事事件の手続きは複雑であり、状況によって対応も異なってきます。
弁護士であれば状況に応じた適切な対応につなげることができるのです。
また示談交渉や証拠収集を加害者に代わって行うことも弁護士の役割となります。
示談交渉では被害者の方とやり取りをするということもあり、被害者の方の中には、加害者やその家族とは連絡を取りたくないという方もいます。
そうした場合でも、弁護士が代理人となることによって、円滑に示談交渉を進めることができます。
証拠収集でも、弁護士だけが利用できる弁護士会照会によって、早く、確実に証拠を収集することができます。
加えて、刑事事件に強い弁護士であれば適切な更生プログラム、治療を行う医師などとのつながりもあり、スムーズに更生に移ることもできます。
弁護士という法律への専門性、そして代理人としての信用性が加害者側弁護士の重要性となります。
弁護士選びのポイントと注意事項
弁護士の役割と重要性についてみてきましたが、知り合いに弁護士がいない場合には、弁護士をどう選べばよいかわからないという方もいるでしょう。
ここでは、弁護士の選び方についてみていきます。
加害者側弁護士の選定基準
加害者側の弁護士を選ぶ際の基準としては、刑事事件を強みとしているかどうかという点があります。
刑事事件において、加害者側の弁護士は、警察や検察といった国と戦うことになります。
警察や検察は、刑事事件だけを専門的に扱っており、高度な専門性を有していることから、加害者側の弁護士としても、刑事事件についての専門性を有していることが大切です。
そのため、これまでに刑事事件を扱ってきたという実績があり、刑事事件を強みとしていることがポイントとなります。
また、刑事事件では、加害者と弁護士とのコミュニケーションが欠かせません。
そして、刑事事件は長期間に及ぶこともあるため、コミュニケーションをとっていて、信頼できると感じられるかも、選ぶ際のポイントとなります。
弁護士に求めるスキルや経験の特定ポイント
弁護士に必要とされるスキルとしては、交渉力や説得力といったことになります。
示談交渉においては、金額面などで被害者の方と交渉をしていくことになります。
そして、警察や検察に対しては、有利な処分をしてもらえるよう交渉し、時には説得する必要があるためです。
こうしたスキルを有しているか特定するポイントとしては、実際にどのような解決実績があるのかというところが最も分かりやすくなっています。
近年では多くの弁護士が自身のwebサイト等を有しており、解決実績を掲載しています。
どういった実績をどれだけ有しているか、そしてどの程度の割合で刑事事件を扱っているかという点から、刑事事件に対しての専門性を図ることができます。
書類送検の過程での加害者の権利・法的保護とイメージ修復について
ここでは、書類送検の過程で、加害者に認められている権利についてみていきます。
加害者の権利(プライバシーの権利)とそれを守るための手段
刑事事件の加害者であっても、プライバシーの権利があります。
プライバシーの権利とは、個人の私生活上の情報をみだりに公表されない権利のことをいいます。
書類送検であっても、時に実名で報道されることがあり、ネガティブな印象を与えることになりかねません。
また、書類送検は、それ自体が有罪判決のような、刑事罰ではないにもかかわらず、世間では罪を犯したことが確定したかのように誤解されていることもあります。
そのため、本人だけにとどまらず、その家族にまで犯罪者の家族であるといった形でネガティブな印象を与えかねません。
こうしたプライバシー侵害に対しては、記事の削除を依頼する、そして記事の掲載者に対して損害賠償を請求するといった手段が考えられます。
記事の削除が実現されれば、事後的な被害を軽減することができます。
また、損害賠償請求をすることによって金銭賠償を受けることができれば、損害を補填することができます。
イメージの修復やリカバリーの方法と可能性
ネガティブな印象を本人、そして家族に対しても与えてしまいかねない書類送検ですが、このイメージを修復する方法として、適切な更生プログラムを受講したり、専門の機関で治療を受けたりすることがあります。
こうした活動は不起訴や量刑での有利な事情になると説明しましたが、罪に向き合い、再犯防止に取り組んでいることになるため、身近な人たちからのイメージの修復に役立つ面もあります。
まとめ
書類送検は、報道での言葉の用いられ方としては、それ自体が処分というイメージを抱く方も多いかもしれませんが、実際には刑事事件の過程における一つの手続きに過ぎません。
しかし、書類送検された後、検察官が起訴すべきと判断した場合には、刑事裁判を経て前科が付く有罪判決を受ける可能性が高いです。
また、書類送検であっても、実名報道され、プライバシーが侵害されるなどのリスクも存在します。
そのため、刑事事件の加害者となってしまった場合には、早期に弁護士に相談し、対応を依頼した方がよいでしょう。
この記事の監修者
弁護士法人エースパートナー法律事務所市川 知明弁護士
■神奈川県弁護士会
刑事事件は、いつ弁護士に依頼するかによって、対応の幅が変わったり、不起訴処分や減軽の可能性が高くなったりします。
弁護士法人エースパートナー法律事務所は、逮捕段階・勾留段階、逮捕前のご相談も受け付けております。
「依頼者の方との絆”を大切に、迅速・適切・こまめなサポート」をモットーに日々尽力しておりますので、刑事事件でお困りの方はご相談ください。
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