刑事処分:知っておくべきこと、弁護士の役割
公開日2023/09/22
カテゴリ刑事処分の種類と解説
「刑事処分」とは何か?
刑事処分とは、刑事事件の手続きの中で捜査機関によってなされる処分、そしてその後の裁判によって科される刑罰のことをいいます。
捜査機関がなすものは、微罪処分、不起訴処分、起訴処分の3つに分けられますが、ここでは捜査機関と裁判所がなす処分についてそれぞれ解説していきます。
微罪処分
警察が犯罪の捜査をした場合には、原則として事件を検察に送ることとなっています。
検察へ書類や、逮捕されている場合には被疑者(俗にいう容疑者)の身柄が送られるため、「送検」という言葉が用いられることもありますが、この送検がなされずに警察だけで完結する処分が微罪処分となります。
微罪処分となる基準はありませんが、非常に軽い犯罪でなければこの処分となることはありません。
具体的には、被疑者に前科前歴がなく、被害の賠償がなされている少額の窃盗罪などの場合に、この微罪処分となることがあります。
微罪処分の場合には、起訴不起訴の判断をする検察に送られることさえないため、前科が付くことはありません。
不起訴処分
不起訴処分とは、送検された事件について、検察官が起訴しないと判断する処分のことをいいます。
起訴されないこととなるため、微罪処分と同様に前科が付かない処分となります。
この不起訴処分は、以下の3つの種類に分けられます。
- 嫌疑なし:無実であることが証明された場合
- 嫌疑不十分:罪を犯したという疑いはあるが証拠が不十分である場合
- 起訴猶予:罪を犯したことは確実であるが、示談が成立しているなどの事情によって起訴する必要がないと判断された場合
微罪処分となるケースは少ないため、前科が付かないようにするためには、この不起訴処分を求めていくことになります。
起訴処分
検察官が、被疑者を刑事裁判にかけて刑罰を科すべきと判断した場合になされる処分となります。
起訴されてしまった場合には、日本の刑事裁判の有罪率は99%を超えていることから、ほとんど確実に罰金や懲役などの有罪判決を受けることになるといえます。
略式裁判
通常の起訴処分とは別に、略式裁判という手続きもあります。
この手続きは、100万円以下の罰金に相当する、事案が明白で簡易な事件について、被疑者に異議がない場合に、公開の法廷による裁判を経ることなく書面による審査で裁判を行うものになります。
検察官がこの略式裁判を求めて起訴することから、略式起訴という言葉が用いられることもあります。
判決
起訴後の刑事裁判で、裁判所が被告人(起訴後の被疑者の呼び方)に対して下す判断を判決といいます。
判決には大きく分けると無罪判決と有罪判決があり、起訴処分で説明したように日本の刑事裁判の有罪率は99%以上であるため、ほとんどが有罪判決となります。
有罪判決には死刑、懲役刑、禁錮刑、罰金刑、科料があり、それぞれについてすぐにその刑罰が科される実刑と、猶予期間が設けられる執行猶予付き判決があります。
刑事事件に巻き込まれた場合の対応
警察から任意で事情を聞かれる、あるいは逮捕されてしまうという事態になって初めて刑事事件に巻き込まれていることを知るという場合も多いでしょう。
刑事事件に巻き込まれてしまった場合には、その対応の1つ1つが重要性を持つことになります。
特に、初期対応はその後に大きな影響を及ぼすため注意が必要です。
事情聴取や取り調べといった形で警察から話を聞かれた際には、供述調書という書面が作成されますが、この書面は裁判においての証拠とされることがあります。
そのため、供述調書に署名押印等する際には、内容に誤りがないかを確認することが欠かせません。
加えて、裁判に至った場合に、供述調書と異なる供述をしてしまうと、悪い印象を持たれてしまいかねないため、この点からも注意が必要となります。
そのため、事件に巻き込まれてしまったことが分かった場合にはできるだけ早く弁護士に相談した方がよいでしょう。
相談することで、自身が置かれている状況を説明してもらうことができ、その上でどういったことを話すべきなのか、どう対応すればよいのかについて教えてもらうことができます。
弁護士の役割と重要性
刑事事件では弁護士に弁護を依頼することが重要といわれることがあります。
ここでは、弁護士に依頼した場合の役割と重要性についてみていきます。
役割①精神的サポート
弁護士の役割としてまず挙げられるのが、被疑者の精神的サポートを行うこととなります。
被疑者が逮捕されてしまった場合には、逮捕の期間は家族であっても原則として面会が許されず、その後の勾留の段階でも制限がされてしまうこともあります。
そのような状況であっても、捜査に支障がない限りはいつでも時間制限なく面会できるのが弁護士となります。
捜査機関の取り調べに1人で応じなければならない被疑者に寄り添って、事件の相談に応じ、そして家族との連絡役を担うことで精神的にサポートをしていくことができるのです。
役割②法律的サポート
弁護士の役割として法律的なサポートも挙げられます。
刑事事件の手続きに従って取り調べなどが進められていきますが、具体的にどういった手続きがあるのか、そして見通しはどのような状態であるのかを被疑者が判断することは困難です。
弁護士であれば、被疑者と面会し、手続きの流れを説明し、見通しを伝えることができます。
加えて、証拠収集や被害者の方との示談交渉を進めるなどして、被疑者に有利な判断をするよう捜査機関に求めていくこともできます。
このように、弁護士は、法律の専門家としてのアドバイスや弁護活動といったサポートを行います。
弁護士に依頼する重要性
弁護士に依頼する重要性としては、弁護士であるからこそできる難しいサポートをしてもらえるという点にあります。
逮捕期間中の面会については、弁護士でなければ困難であり、その期間の精神的なサポートは弁護士にしか行うことができないことといえます。
また、状況や見通しの説明についても、法律の専門家である弁護士でなければ判断が難しいものとなります。
証拠収集についても、弁護士であれば弁護士会照会というより確実な方法がある点や、示談交渉についても、代理人としての弁護士が付いていない場合には応じてもらえないということもある点などにおいて、弁護士に依頼することは大変重要になってくるといえます。
刑事事件の種類と刑罰の範囲
刑事事件では、主に刑法典に定められた犯罪についての刑法犯と、それ以外の法律等によって定められた犯罪についての特別法犯に分けられます。
刑法犯
刑法犯については、殺人や窃盗など多くの犯罪が含まれることになりますが、警察庁の統計ではさらに以下の6種類に分類されています。
①凶悪犯:殺人、強盗、放火、不同意性交等
②粗暴犯:傷害、暴行、脅迫、恐喝、凶器準備集合
③窃盗犯:窃盗
④知能犯:詐欺、横領、背任など
⑤風俗犯:賭博、わいせつ
⑥その他の刑法犯:住居侵入、公務執行妨害、器物損壊など
また、刑法犯は刑法典に規定されたものが大半ですが、統計上は「爆発物取締罰則」や「暴力行為等処罰ニ関スル法律」などといった法令のかかる犯罪も刑法犯に分類されています。
特別法犯
特別法犯は上記の刑法犯以外の犯罪のことを言います。
特別法犯は、当初の刑法典の段階では規定されておらず、後の社会状況に対応する形で規定された犯罪となります。
具体的には覚せい剤取締法違反や大麻取締法違反、痴漢に適用されることの多い迷惑防止条例などがこれにあたります。
刑罰
刑罰については、刑法犯、特別法犯のいずれについても、死刑、懲役、禁錮、罰金、科料が法定刑とされており、法典に記載されたものが適用されることになります。
刑事事件の訴訟プロセスの詳細
刑事事件では、捜査の後に起訴がなされ、裁判に移行し、判決を受けるという流れになります。
以下では刑事事件の訴訟プロセスと弁護士のかかわりについて詳しく見ていきます。
捜査・起訴
事件について、被害届が出されるなどした場合には、警察は捜査を行います。
捜査には実況見分や防犯カメラの解析、被疑者の取り調べなどがあります。
特に取り調べについては、その場で述べたことが証拠となることから、弁護士に相談し、注意事項についてあらかじめ聞いておくことが、有利な判断につながります。
捜査の結果、被疑者が罪を犯したといえるだけの証拠が集まり、示談の成否や犯情などにより、裁判にかけて刑罰を与えるべきと検察官が判断したときに起訴されることになります。
弁護士は起訴しないように働きかけていくことになります。
裁判
裁判の段階は、①冒頭手続、②証拠調手続、③弁論手続、④判決という順番で進んでいきます。
①冒頭手続
冒頭手続では、被告人が誰であるのか、どのような嫌疑がかけられているのかを確認するとともに黙秘権などの権利が告知され、嫌疑に対しての認否を述べることになります。
②証拠調手続
証拠調手続では、検察官と被告人側の双方が主張を述べ、証拠を出しながらその主張を証明していきます。
証拠には被告人本人への質問に対する回答も含まれることから、どういった話をすべきであるのかを事前に弁護人と相談する必要があります。
また、検察官が提出する証拠についても、被告人側も証拠を用いるなどして適切な反論をすることが重要で、この点でも弁護人による弁護活動が必要となります。
③弁論手続
弁論手続では、検察官がどの法令を適用し、どれだけの刑を科すべきか述べ、それに対して被告人側が反論をすることになります。
最後には被告人が意見を述べる機会として最終陳述も設けられます。
最終陳述では、無実を主張する、あるいは被害者の方への謝罪を述べるなどしますが、ここでの印象が裁判官に影響を与えることもあるため、弁護人と相談し、話す内容を決めておいた方がよいでしょう。
④判決
判決では、無罪か有罪か、有罪であればどの刑がどれくらい科されるかが言い渡されます。
判決に不服がある場合には上訴することになりますが、どういった理由で上訴するのかを示す書面の提出が必要となり、書面の作成には高い専門性が要求されることから、弁護士活動が非常に重要となります。
刑事処分の可能性とリスク
ここでは刑事処分がもたらすリスクとその影響について説明していきます。
家族や職場に知られてしまう
捜査機関がなす刑事処分では、必ず逮捕や勾留といった身柄拘束がなされるわけではありませんが、そういった身柄拘束をされてしまうおそれもあります。
また身柄拘束されなくとも、自宅や職場に警察官が来て任意同行を求められたり、呼び出され取り調べに応じたりしなければなりません。
この過程で家族や職場に被疑者であることを知られてしまうリスクがあります。
知られてしまった場合には、家族間での不和を招く、あるいは職場にいづらくなるといった影響が出てしまいかねません。
前科がついてしまう
起訴されてしまった場合には、ほとんど確実に有罪判決を受ける、つまり前科が付いてしまうことになります。
前科が付いてしまうと、同じような犯罪をした場合に処分が重くなるおそれがあり、職場に知られた場合には解雇されてしまうおそれもあります。
弁護士の選び方
刑事事件の加害者になってしまった場合には、弁護士に相談し、弁護活動を依頼することが不可欠ともいえます。
ここでは、実際に弁護士を選ぶ際のポイントについて説明していきます。
専門性
弁護士を選ぶ際のポイントとしてまず考えられるのが、その専門性の高さです。
刑事事件は離婚などの民事事件に比べて扱っている弁護士が少なく、経験が少ない弁護士も存在します。
そのため、刑事事件を強みとしているか、刑事事件に対応した実績を有しているかという点に注意する必要があります。
刑事事件では、警察や検察など刑事事件だけを専門にしている人たちが相手側となるため、それに対抗できるだけの専門性がなければ、有利な処分は期待できません。
費用
次にポイントとして考えられるのが、弁護士費用となります。
弁護士費用については一定の基準がありますが、それでもなお幅があり、また着手金と成功報酬から算定する方式と、時間制で報酬が算定される方式があります。
候補となる弁護士に直接問い合わせるなどして、具体的な費用について確認し、比較検討した方がよいでしょう。
相性
最後にポイントとなるのが、弁護士との相性となります。
依頼者と弁護士の関係は信頼関係によって成り立つものであり、お互いが信頼することができなければ、良い結果は期待できません。
そのため、実際に弁護士に相談して、その人柄などから相性についても確認する必要があるといえます。
まとめ
刑事事件では、対応が遅れるほどに、身体拘束が長引く、あるいはより重い処分を受けることになるなど、悪影響が増していくおそれがあります。
そのため、事件に巻き込まれてしまった場合にはできるだけ早期に弁護士に相談し、対応を依頼した方がよいでしょう。
この記事の監修者
弁護士法人エースパートナー法律事務所市川 知明弁護士
■神奈川県弁護士会
刑事事件は、いつ弁護士に依頼するかによって、対応の幅が変わったり、不起訴処分や減軽の可能性が高くなったりします。
弁護士法人エースパートナー法律事務所は、逮捕段階・勾留段階、逮捕前のご相談も受け付けております。
「依頼者の方との絆”を大切に、迅速・適切・こまめなサポート」をモットーに日々尽力しておりますので、刑事事件でお困りの方はご相談ください。
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