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【弁護士監修】飲酒運転したら逮捕される?飲酒運転した場合に問われる罪の種類とは

【弁護士監修】飲酒運転したら逮捕される?飲酒運転した場合に問われる罪の種類とは

公開日2022/07/11

更新日2022/08/12

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弁護士法人ユア・エース正木 絢生弁護士

2000年代になると 、飲酒運転による重大な死傷事件が増加し、大きな社会問題となりました。

それを受け飲酒運転は厳罰化されたため、飲酒運転をした場合のリスクは以前に比べかなり高くなりました。

今回は、飲酒運転で逮捕された場合、負わなければいけない責任や有罪となったときに科される刑罰の種類について解説していきます。

【この記事のポイント】

  • 飲酒運転した場合の3つの責任がわかる
  • 飲酒運転で逮捕されるケースがわかる
  • 飲酒運転で問われる罪の種類がわかる

飲酒運転すると3つの責任を問われる可能性がある

飲酒運転で逮捕された場合、以下の3つの責任を問われる可能性があります。

  • 民事上の責任
  • 刑事上の責任
  • 行政上の責任


具体的にどのような責任を負う必要があるのかそれぞれ確認していきましょう。

民事上の責任

飲酒運転で逮捕された場合、民事上の責任を負う可能性があります。

具体的にいうと、飲酒運転で人身事故を起こし、相手を負傷させたり、死亡させたりしたケースです。

このような場合、被害者や死亡事故の場合にはその遺族に対して損害賠償責任を負うことになります。

また自動車同士の衝突事故の場合、相手が負傷していなくても、相手の自動車が破損したときには修理費等が損害賠償の対象になるケースもあります。

飲酒運転による事故は、被害者救済の観点から被害者に対する保険はすべて適用されます。

一方で加害者自身に対して適用される人身傷害保険や対物保険等の補償は、飲酒運転が各保険会社の定める免責事項に該当するため、負傷したとしても保険が適用されません。

更に付け加えると法令違反による負傷は、国民健康保険や健康保険等の保険についても適用外となってしまうので、医療費全額が加害者の負担となります。

刑事上の責任

「酒気帯び運転」「酒酔い運転」といった飲酒運転を行った場合、道路交通法(以下道交法)で定められている刑事罰が科されることになります。

道交法では、飲酒運転を行った運転者自身に対する罰則だけでなく、車両の提供者酒類の提供者同乗者に対する罰則もあります。

さらにいうと飲酒運転により事故を起こし、被害者に負傷させたり、死亡させた場合は、「過失運転致死傷罪」「危険運転致死傷罪」が適用される場合もあります。

行政上の責任

飲酒運転では行政上の責任も問われることになります。

飲酒運転を行うと、道交法に基づいて公安委員会が免許の取り消しや停止の処分をくだします。

飲酒運転は法律上「酒気帯び運転」「酒酔い運転」で分けることができ、どちらになるかによって処分の重さに違いがあります。

またややこしいのですが、「酒気帯び運転」の中でも呼気中や血中のアルコール濃度によって、行政処分の内容が異なり、以下の表が目安になります。

呼気1リットルあたりに検出される

アルコール濃度

行政処分の内容
基礎点数 免許の処分
0.15mg未満 なし なし
0.15mg以上0.25mg未満 13点 免許停止(停止期間90日)
0.25mg以上 25点 免許取消し(欠格期間2年)

※欠格期間とは、運転免許の取り消し処分がなされた場合に、運転免許を再度受け取ることができない期間のこと

上記の表が適用されるのは、前歴が無かったり、交通違反によって減点されたことが無かったりする場合です。

酒気帯び運転を行う以前に交通違反を起こしていた場合には、処分内容が異なるケースもあります。

「酒酔い運転」とは、飲酒したアルコールの影響で、車両の正常な運転ができない状態で運転する行為を意味します。

酒気帯び運転とは異なり、呼気中のアルコール濃度等の明確な基準が定められているわけではありません。

酒酔い運転に該当するかどうかは、以下のような状態を総合的に考慮し判断されます。

  • 白線の上を直進できない
  • 警察官の質疑応答でろれつが回っていない
  • 視覚や視点から認知能力が機能していない
  • その他、運転者の言動、酒臭、顔色等

酒酔い運転は酒気帯び運転よりもさらに重い行政処分がくだされます。

基礎点数は35点免許取消し処分(欠格期間は3年)となり、一発で免許取り消しになるという重い処分が科せられます。

飲酒運転に付随して死傷事故を起こした場合やひき逃げをした場合等にはさらに欠格期間が長くなり最大で10年に及ぶケースもあります。

飲酒運転の刑事罰は大きく2つに分けることができる

飲酒運転で有罪となった場合、どのような刑罰が科されてしまうのでしょうか。

飲酒運転は大きく「酒気帯び運転」「酒酔い運転」の2つに分けることができ、それぞれに罰則規定が設けられています。

さっそく具体的な刑罰について確認していきましょう。

酒気帯び運転は懲役3年以下または50万円以下の罰金

酒気帯び運転の刑事罰は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。

また、車両の提供者にも同様の刑事罰が科される可能性があります。

酒類の提供者や車両の同乗者については、「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」が科されることもあります。

酒酔い運転は懲役5年以下または100万円以下の罰金

酒酔い運転に該当する場合は、「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科せられます。

酒気帯び運転と同様、車両の提供者には同じ刑事罰が、酒類の提供者や車両の同乗者の場合は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科されます。

飲酒運転をするとすぐに逮捕されてしまうのか

飲酒運転をするとすぐに逮捕されてしまうのでしょうか。

飲酒運転が発覚した場合、逮捕されるケースと逮捕されないケースがあります。

どのような場合に逮捕されるのか、あるいは逮捕されないのか見ていきましょう。

飲酒運転で逮捕されるケース

飲酒運転で逮捕されるケースとはどのようなケースが考えられるでしょうか。

飲酒運転で逮捕される可能性の高いシチュエーションとして次のようなことが考えられます。

  • 過去に飲酒運転の罪で前科・前歴がある
  • 重大な人身事故を起こしている
  • 発覚を恐れて呼気検査等を拒否し警察から逃走している
  • 別事件で執行猶予期間中だった


上記のようなケースでは、逮捕・勾留の可能性が高いといえます。

特に、飲酒運転で重大な人身事故を起こした場合は、免許取消しになるとともに危険運転致死傷罪等の重い刑事罰を科されることが予想されます。

執行猶予がつかない懲役刑が下される可能性が高いといえるでしょう。

飲酒運転は逮捕されないケースもある

飲酒運転の中でもアルコールの検出量が少なかったり、前科がなかったりするケースでは、逮捕されないことがあります。

この場合、身柄を拘束されていないため、普段の生活を送りながら警察や検察の出頭要請時に捜査協力をすることになります。

飲酒運転によって問われる可能性のある罪

飲酒運転は「酒気帯び運転」や「酒酔い運転」以外にも状況によって、以下の刑事罰を科せられる可能性があります。

  • 過失運転致死傷罪
  • 危険運転致死傷罪


これらの罪は、飲酒運転等の危険行為によって、他人を負傷させたり、死亡させたりすることによって問われる可能性のある罪です。

具体的にどのような刑罰がくだされるのか確認していきましょう。

過失運転致死傷罪の場合

過失運転致死傷罪とは、自動車の運転上必要な注意を怠り、死傷事故を起こした場合に適用されます。

過失運転致死傷罪の法定刑は、「7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金」です。

飲酒運転で過失運転致死傷罪に問われた場合、道交法上の罰則規定も同時に満たしていることになりますので、併合罪(へいごうざい)となる可能性があります。

併合罪とみなされた場合、1つの罪を犯したときよりも法定刑の上限が上がります。

したがって、飲酒運転で過失運転致死傷罪に問われた場合には、以下のような上限設定となります。

■過失運転致死傷罪と酒気帯び運転が該当する場合

→法定刑は、「10年6月以下の懲役(もしくは禁錮)または150万円以下の罰金」


■過失運転致死傷罪と酒酔い運転が該当する場合

→法定刑は、「10年6月以下の懲役(もしくは禁錮)または200万円以下の罰金」

このように、飲酒運転で人を負傷させたり死亡させたりした場合、かなりの重い罪が科せられる可能性が高くなります。



危険運転致死傷罪の場合

飲酒運転で人を負傷させたり、死亡させたりしたときに悪質性が高いと判断されると、危険運転致死傷罪準危険運転過失致死傷罪が成立する可能性があります。

ふたつの罪の違いは以下のとおりです。

危険運転致死傷罪…アルコールの影響によって正常な運転が困難な状態と認識しながら、自動車を走行させる行為で死傷事故を起こした。(処罰法2条1号)

準危険運転致死傷罪…アルコールの影響によって正常な運転に支障が生じるおそれがあると認識しながら、自動車を運転し、アルコールの影響で正常な運転が困難な状態に陥り、死傷事故を起こした。(処罰法3条1項)

危険運転過失致死の場合、法定刑は人を負傷させた場合は15年以下の懲役、人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役となります。

準危険運転過失致死傷罪の場合の法定刑は、人を負傷させた場合は12年以下の懲役、人を死亡させた場合は15年以下の懲役です。

なお、ふたつの罪は飲酒運転を前提としています。

したがって、飲酒運転の罰則規定は適用されず、併合罪にはなりません。

アルコールの影響によって運転上必要な注意を怠り、死傷事故を起こした場合に、その運転の時のアルコールの影響の有無や程度が発覚することを免れるためにさらにアルコールを摂取したり、身体に保有するアルコールの濃度を減少させたりすると、「過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪」として、12年以下の懲役刑に処されることもあります。

飲酒運転で逮捕された場合には弁護士への相談を検討すべき

飲酒運転をしてしまったときや、家族が飲酒運転で逮捕された場合は、ただちに弁護士へ相談しましょう。

逮捕されると、警察等の捜査機関から取調べを受けることになりますが、不用意な発言を行ってしまうと、想定以上の重い刑罰が科されることがあります。

弁護士に相談することで、捜査機関から取調べの際のポイントやアドバイスを受けることができ、話すべきことかそうでないものかを区別して取り調べに臨むことができます。

また、飲酒運転で事故を起こした場合でも、被害者側と示談交渉が可能なケースは少なくありません。

弁護士に依頼することで被害者側と早期に示談が成立し、刑事罰の軽減や早期の身柄解放が期待できます。

まとめ 今回は飲酒運転をした場合に問われる責任の種類や問われる刑事罰について解説しました。

刑事事件は早い段階から対応することで、逮捕等に伴う不利益を最小限にとどめることができます。

お困りの際は、刑事事件に精通した弁護士に相談しましょう。

この記事の監修者

弁護士法人ユア・エース正木 絢生弁護士

【所属】第二東京弁護士会所属
刑事事件の弁護は、迅速な対応することによって、早期の身柄釈放や、執行猶予、減刑が望めます。
しかし、それを実現するためには、前提としてご依頼者の方と弁護士に信頼関係がなければなりません。
理想である依頼者の方に安心してもらえる弁護士になれるよう日々尽力しておりますので、刑事事件でお困りの際はご連絡ください。

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