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【弁護士監修】逮捕と勾留の違いとは?

【弁護士監修】逮捕と勾留の違いとは?

公開日2022/04/28

更新日2022/08/03

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高野隆法律事務所上野 仁平弁護士

「逮捕」はニュース等でよく耳にする言葉ですが、「勾留」という言葉はあまりなじみがないという方も多いのではないでしょうか。

「逮捕」と「勾留」には大きな違いがあります。一般の方が刑事事件に関わることはほとんどありませんが、いざ関わることとなったときに両者の違いを知らないと対応が手遅れになってしまう場合があります。

今回は「逮捕」と「勾留」の違いについて解説していきます。



【この記事のポイント】

  • 逮捕と勾留の違いがわかる
  • 逮捕と勾留の期間がわかる
  • 勾留された後どのような場合に釈放されるのかがわかる

逮捕と勾留は具体的に何が違うのか?

「逮捕」とは、被疑者の逃亡または罪証隠滅を防止するために行われる短期間の身柄拘束をいいます。

現行犯逮捕などの場合を除き、捜査機関は、原則として裁判官から逮捕状を取ったうえで被疑者を逮捕しなければなりません。

また、タイムリミットが決まっており、被疑者を逮捕してから最大72時間以内に、検察官は勾留請求をするかどうかを決めなければなりません。

一方で、勾留とは、逮捕に引き続いて行われる身柄拘束をいい、勾留には例外なく勾留状を必要とします。

逮捕後から起訴される前までの勾留(被疑者勾留)の場合、最大10日間、勾留が延長された場合には最大20日間の身柄拘束が続きます。

検察官から起訴された後の勾留(被告人勾留)の場合、保釈が認められない限り、刑事裁判で判決が出るまで長期にわたって身柄拘束される可能性があります。

逮捕と勾留は、主に以下の3つの違いがあります。


  1. 接見・面会の制限
  2. 弁護人の選任
  3. 期間の長さ

早速確認していきましょう。

逮捕と勾留の違い①接見・面会の制限

逮捕と勾留(被疑者勾留ないし起訴前勾留)の違いの一つは、弁護士以外の家族や知人等が接見・面会することができるかどうかです。

「接見」とは、逮捕等により身柄拘束されている被疑者・被告人と外部の人間とが刑事収容施設内で面会することをいいます。

「接見」は法律で規定されている法律用語ですが、皆さんに聞きなじみのある「面会」と実質的には同じ意味ですので、「面会」と置き換えて考えていただいて構いません。

逮捕の場合、弁護士以外の方はほとんど接見することはできません

一方で、勾留の場合、弁護士以外のすべての方との接見を禁止する措置(接見禁止決定)がなされている場合を除いて、家族や知人も被疑者・被告人と接見することができます

ただし、弁護士以外の者が接見する場合には、警察官の立会いが入りますし、面会日や時間、人数等の制限もあります。

なお、弁護士の場合は、逮捕段階でも勾留段階で接見禁止措置がとられていたとしても、被疑者や被告人と接見することができます。

ポイント:接見の制限の違い

・逮捕・・・弁護人以外の接見は不可

・勾留・・・接見禁止が付かない限り、弁護人以外も接見は可能



逮捕と勾留の違い②弁護人の選任

逮捕と勾留の違いとして、弁護人の選任に関することが挙げられます。弁護人は大きく「私選弁護人」と「国選弁護人」に分けることができます。

私選弁護人被疑者・被告人自身あるいはその家族が選任する弁護士
国選弁護人貧困等の理由で私選弁護人を選任できない場合に、被疑者や被告人の請求により、裁判所が選任する弁護士


逮捕されている段階では、私選弁護人は選任できますが、国選弁護人は選任できません

これは、国選弁護人について規定している刑事訴訟法37条の2第1項が「被疑者に対して勾留状が発せられている場合において」と規定しており、法律上、勾留される前の逮捕段階で国選弁護人を選任することはできないとされているためです。

一方で、勾留後、被疑者は私選弁護人ではなく、国選弁護人を選任してもらうこともできます(ただし、資力等の要件が必要です)。

以前は、勾留されていても被疑者段階では比較的重大な事件(死刑または無期もしくは長期3年を超える懲役もしくは禁錮にあたる事件)にしか国選弁護人をつけることはできませんでした。

しかし、2016年(平成28年)改正の刑事訴訟法により、被疑者段階であっても勾留された場合には国選弁護人を選任してもらうことができるようになり、法定刑による制限がなくなりました。

ポイント:選任できる弁護人の違い

・逮捕・・・私選弁護人のみ選任できる

・勾留・・・私選弁護人または国選弁護人を付けることができる



逮捕と勾留の違い③期間の長さ

逮捕と勾留(被疑者勾留ないし起訴前勾留)の最大の違いは、身柄拘束の期間です。

逮捕は短期間勾留は長期間の身柄拘束です。

具体的には、警察によって逮捕された後は、逮捕から48時間以内に警察から検察に身柄を送らない限り、釈放しなければなりません。

その後、検察官は、身柄を受け取ってから24時間以内に裁判官に対して勾留請求を行う必要があります。

すなわち、逮捕された場合、勾留請求されるまでに最大72時間の身柄拘束を受けることになります。

一方、勾留が認められた場合、検察官が勾留を請求した日から10日間身柄拘束されることになります。

さらに、裁判官が勾留延長の「やむを得ない事由」があると認める場合には、更に最大10日間の身柄拘束をされてしまいます。

そのため、起訴前の勾留段階では最大で20日間の身柄拘束を受けることになります。

ポイント:身柄拘束の長さの違い

・逮捕・・・最大で72時間の身柄拘束

・勾留(被疑者勾留)・・・最大で20日間の身柄拘束



勾留後、起訴や不起訴が決まれば釈放されるのか

勾留された後、どのような場合に釈放されるのでしょうか。勾留された後に起訴された場合と不起訴となった場合とに分けて確認していきましょう。

起訴後も引き続き身柄拘束される可能性がある

勾留中に起訴された場合、保釈が許可された場合を除き引き続き身柄拘束を受けることになります。

検察官は犯罪の嫌疑が十分に認められ、刑事裁判で裁判所の判断を仰ぐ必要があると考えた場合、起訴します。

起訴した段階で、犯罪を行った疑いがある者は、「被疑者」から「被告人」に名称が変わります。

起訴後も引き続き勾留が続きますので、被疑者段階での勾留と区別するため、被告人段階の勾留を「被告人勾留」(あるいは「起訴後勾留」)と呼ぶことがあります。

被告人勾留の場合、検察官の請求によらず、裁判所・裁判官の職権により行われます。

被疑者勾留の場合と同様に、次の要件を満たす必要があります。

(1)被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること

(2)次の①~③のうち、いずれかを満たすこと

①被告人が定まった住居を有しないとき。

②被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

③被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

(3)勾留の必要性(刑事訴訟法87条1項)

刑事訴訟法60条、87条1項(e-gov)を参考



被告人勾留の場合、勾留期間は最大2か月で、特に継続の必要がある場合には、1か月ごとに期間を更新することができます。

しかし、起訴後に被告人勾留がなされた場合でも、身柄の解放が行われる場合があります。

一定の保証金を納めることを条件に、被告人の身柄を一時的に解放する制度を「保釈」といい、たとえ被告人勾留が続いても、身柄を解放することができます。

もっとも、裁判所の呼び出しに応じなかったり、逃亡や証拠隠滅を行ったりする等、一定の条件に違反すると保釈が取り消され、保釈金の全部または一部が没収されます。

保釈には、請求があった場合には、法律で定められた例外事由に該当しない限り、裁判所は必ず保釈を許可しないといけないという権利保釈という制度があります。

権利保釈が認められない場合でも、裁判所が職権により保釈を許可することができるという裁量保釈という制度もあります。

その他、勾留による身柄拘束が不当に長くなった場合は義務的に保釈される義務的保釈というものもあります。

不起訴の場合は釈放される

検察が不起訴処分と判断した場合、身柄の拘束が解かれ釈放されます。不起訴処分の理由には、「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」の3種類があります。

「嫌疑なし」は、被疑者が犯人でないことが明らかな場合や犯罪を認定する証拠がないことが明らかな場合をいいます。「嫌疑不十分」は、犯罪と疑われる事実を認定するだけの証拠が不足している場合をいいます。

一方、「起訴猶予」とは、犯罪を行った疑いが十分にあり、起訴しようと思えばできるけれど、犯人の性格や年齢、境遇、犯罪の軽重、情状等を考慮して、あえて不起訴処分にした場合をいいます。

これらの判断は、すべて検察官が行います。

逮捕されたらなぜ早く弁護士に依頼するべきなのか

もし、あなたもしくはあなたの家族が逮捕されてしまったら、すぐに弁護士へ相談し、依頼することが大切です。

なぜ早期の弁護士への依頼が大切なのかを解説していきたいと思います。

逮捕期間は私選弁護人しか選任できない

逮捕期間は、国選弁護人を選任することができず、私選弁護人だけが被疑者に対し、弁護活動を行うことができます。

つまり、私選弁護人を選任しなければ、被疑者となった方は、ひとりで捜査機関の取り調べに臨まなければなりません

弁護士に依頼すれば、取り調べに関する適切なアドバイスをしてもらえ、不当な取り調べに対しては抗議をしてもらえます。

被疑者としての権利を適切に行使することができ、精神的負担が軽減された状態で取り調べに臨むことができます。

また、捜査機関は、必ずしも家族や勤務先に連絡して事情を話してくれるとは限りません。

そのため、勤務先等に事情を話す必要がある場合は、弁護士を通じて連絡することになります。

社会的な不利益を最小限にするための方法を弁護士と相談できます。

身柄拘束期間を短くすることを期待できる

弁護士に依頼するメリットとして、身柄拘束をできるだけ短くするよう尽力してもらえるという点があります。

逮捕・勾留をされると、起訴・不起訴されるまでに最大で23日間にわたって身柄が拘束されてしまいます。

長期間の身柄拘束の可能性を低くするには、逮捕後72時間以内の弁護活動が非常に重要になります。

たとえば、勾留しないよう裁判官に意見を述べることは重要な弁護活動です。

早い段階で弁護士を選任することで、スピード感をもって身柄解放に向けた証拠や情報の収集をしてもらうことができます。

弁護士の初動が早ければ早いほど、身柄解放に向けた有益な弁護活動を期待できます。

逆に、弁護士の選任が遅れることで、保全すべき重要な証拠がなくなってしまったり、家族の支援を得た身柄解放活動ができなくなるなど、大きな不利益が生じる可能性があります。

まとめ

今回の記事では、逮捕と勾留の違いについて解説しました。

刑事事件は早い段階から対応することで、逮捕等に伴う不利益を最小限にとどめることができます。お困りの際は、刑事事件に精通した弁護士に相談しましょう。

この記事の監修者

高野隆法律事務所上野 仁平弁護士

【所属】第二東京弁護士会
すべての被疑者や被告人に「最高の弁護」をモットーに日々刑事弁護を行っています。
事案複雑な事件や否認事件でも積極的に弁護活動を行っております。
ご依頼者さまの望む結果を得られるよう尽力いたしますので、お困りの際にはご相談ください。

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