【徹底解説】会社員が逮捕されたことを秘密にできるケースとは?
公開日2022/04/07
更新日2022/08/03
カテゴリ逮捕された場合の対処法
逮捕された場合、警察から会社に「従業員を逮捕した」と必ず連絡が来ると思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、実際は警察が必ず会社に連絡するわけではありません。
今回は、会社員が逮捕された場合のデメリットや逮捕を秘密にできるケースについて考えていきましょう。
【この記事のポイント】
- 会社員が逮捕された場合のデメリットが知れる
- 会社員が逮捕されたことを秘密にできるケースがわかる
- 逮捕されたことを秘密にしたいとき弁護士に依頼するメリットがわかる
会社員が逮捕された場合のデメリットとは?
会社員が逮捕された場合、「逮捕されたこと」=「即時解雇」になるわけではありません。
犯罪の成否は、推定無罪の原則があるため、刑事裁判が確定するまでは、○○の罪を犯したと「嫌疑」がかかっている状態です。
したがって、逮捕されただけでは、罪を犯したことが確定しているわけではなく、誤認逮捕の可能性もあり得るので、会社としても従業員が逮捕されたからといって、即時に解雇へ踏み切ることはできません。
しかしながら、逮捕された場合、次のようなデメリットが発生する可能性があります。
- 長期無断欠勤で会社から解雇される恐れがある
- 職業によっては不起訴となっても懲戒免職になる可能性がある
早速、それぞれどのような場合にデメリットが発生するのか確認していきましょう。
長期無断欠勤で会社から解雇される恐れがある
会社員が逮捕されるデメリットとして挙げられるのは、長期無断欠勤で会社から解雇される恐れがある点です。
逮捕された場合、最大で72時間身柄を拘束されます。
この期間内に釈放されない場合、勾留といって引き続き身柄を拘束されることになります。
勾留は、原則として最大10日間、延長の必要があるとされた場合には、最大20日間身柄を拘束されることになります。
つまり最大23日間、出社できなくなる可能性があるのです。
逮捕、勾留期間ともに、身柄を拘束されている本人が自ら会社に連絡を取ることはできません。
そのため、家族等が本人に代わって連絡をしない限り、無断欠勤扱いで解雇されてしまう可能性があります。
逮捕されたこと自体は解雇の理由になりません。
しかし、逮捕されたことにより長期にわたって身柄を拘束されると無断欠勤扱いになり、職務怠慢を理由に解雇されるケースもあるので、これは大きなデメリットといって良いでしょう。
なお、逮捕された場合、警察が必ず会社に連絡するわけではありません。
むしろ、会社が事件に関わっていない場合、プライバシー保護の観点から、警察が率先して会社に逮捕の事実を告げるとは考えにくいです。
一般人が逮捕された情報は、社会的に関心度の高い犯罪であったり、公務員や社会的地位の高いひとだったりしない限り、警察が積極的に公開することはありません。
そのため、会社側が従業員の逮捕を知るタイミングとして逮捕されたひとの家族から事情を聞く場合が多いと思われます。
とはいえ、警察から会社に連絡がいかず秘密にできたとして、勾留や起訴等を経て身柄を拘束される期間が長くなり、長期無断欠勤が続くと、職務怠慢で解雇されてしまう可能性があります。
秘密にできたとしても、職を失っては意味がないので、警察から会社に連絡が行かないことは、状況によって安心材料とはいえません。
職業によっては不起訴となっても懲戒免職になる可能性がある
逮捕された場合のデメリットとして職業によっては不起訴になっても懲戒免職になる可能性があることです。
逮捕後、検察が勾留請求を裁判所に行い、その請求が認められると被疑者は勾留されることになります。
勾留後、検察は警察から送致された実況見分や証拠書類、被疑者との面談を行い、起訴するか、不起訴にするかを決めます。
不起訴になった場合、前科がつくことなく釈放されるので、基本的に会社はその被疑者を解雇することはありません。
しかし、ひとくちに不起訴といっても、「嫌疑なし」・「嫌疑不十分」・「起訴猶予」と3つの種類があり、以下のような意味を持ちます。
- 嫌疑なし…明らかに犯人でないことや犯罪の事実を認定に足る証拠が無い場合に受ける不起訴処分のこと。
- 嫌疑不十分…犯罪事実の認定や犯人であることに足る十分な証拠を得られず、検察官が起訴したとしても有罪判決にならないと判断したときの不起訴処分のこと。
- 起訴猶予…犯罪事実の認定や犯人であることを十分に立証できる証拠があり、また被疑者自身も犯罪事実を認めている。起訴しても有罪判決の可能性は高いが、被疑者が反省していること等を鑑みて不起訴処分にすること。
「嫌疑なし」や「嫌疑不十分」で不起訴となった場合は問題ありませんが、「起訴猶予」となった場合、公務員や社則によっては、懲戒免職される可能性があります。
例えば、国家公務員や地方公務員は、その職の信用を失う行為、「信用失墜行為」を行った場合、当然に失職するということが明記されています。
そのため不起訴となったとしても、犯罪を認めていた場合にはその職を追われる可能性があるのです。
会社員が会社に逮捕を秘密にできる可能性が高いケースを知ろう
会社員が逮捕された場合、長期の身柄拘束等によって解雇されてしまう可能性があります。
法律上「逮捕」の状態は、犯罪の嫌疑がかかっている状態で、実際に犯罪を行ったとは限りません。
しかし、イメージとして「逮捕」=「犯人」と感じてしまう方は多いと思います。
そのため、会社に逮捕されたことが知られてしまうと、会社で勤務しづらい雰囲気になってしまう可能性もあります。
法律上の問題だけではなく、周囲との関係性を壊さないためにも「逮捕されたことを秘密にしたい」と考える方がほとんどでしょう。
しかし、実際のところ、会社に逮捕されたことを秘密にできるのでしょうか。
ケース①すぐに釈放されたとき
会社に逮捕されたことを秘密にできるケースとして、すぐに釈放されたときが考えられます。
検察の行う勾留請求が却下されれば、逮捕期間はおよそ3日程度ですので、無断欠勤をしたとしても即時解雇につながる可能性は低いです。
無断欠勤は職務怠慢といえる行為です。
しかし、比較的短期間の無断欠勤の場合、会社が即時解雇を行うと、反対に「不当解雇」を訴えられてしまう可能性があります。
このようなリスクがあるため、会社が即時解雇を行うとは考えにくいです。
そのため、勾留されずに釈放されれば、最悪の事態である懲戒解雇を免れるでしょう。
とはいえ、無断欠勤によって厳重注意を受ける可能性が高いので、事情を知っている家族がいるのであれば、代わりに欠勤連絡をしてもらえるように便宜をはかるのがベターです。
ケース②微罪処分となったとき
会社に逮捕されたことを秘密にできる状況として、微罪処分となったときが考えられます。
微罪処分を簡単にいうと、事件を検察に送致することなく警察内でおさめる処分のことです。
微罪処分となる判断基準は、法律上定められていませんが、軽微な被害でありすでに被害回復をしていること、計画的犯行ではなく偶発的に起こったこと、再犯の恐れがないこと等が考えられるようです。
微罪処分となった場合、検察に身柄を送致されずに釈放されるので、拘束時間が短く、会社に秘密にできる可能性が高くなります。
会社員が逮捕されたことを秘密にしたいときに弁護士へ依頼するメリット
会社員が逮捕されたことを秘密にしたい場合、弁護士に依頼するメリットはあるのでしょうか。
弁護士に依頼した場合、具体的にどのような対応をとってくれるのか考えていきましょう。
長期勾留を阻止するよう最大限の弁護活動を行ってくれる
会社に逮捕されたことを秘密にしたい場合、弁護士に依頼すると勾留の阻止等、依頼者の最大限の利益を考慮して弁護活動を行ってくれます。
これは、弁護士に依頼する大きなメリットです。
また、長期間勾留が継続することにより、外部と接触をとることができず、不安に陥ることもあります。
弁護士であれば、接見をいつでもおこなうことができるため、外部とのつながりを保つことができます。
刑事事件は、事案や逮捕されたひとの状況、疑われている罪の重さ、罪を認めているかどうか等によって対応が大きく異なります。
弁護士は接見といって逮捕されているひとと自由に面会ができるので、密にコミュニケーションを取り、最善策を見出し、それが実現できるよう尽力してくれます。
早期の示談成立に尽力してくれる
被害者との示談成立は、刑事事件において大きな意味を持ちます。
逮捕を会社に秘密にしたい場合、まずは早期釈放を目指す必要があります。
早期釈放は、被害者との間で示談が成立していることがとても重要な要素です。
なぜなら、一定の被害回復と被害者の処罰感情が低くなっているからです。
弁護士は被害者の感情を考慮しながら、示談交渉を行ってくれます。
示談は、加害者本人や親族が直接行うことはかなり難しく、また交渉方法によっては、かえって被害者の悪感情をあおってしまう結果になりかねません。
そのため、示談は無理に自力で行おうとせず、弁護士に依頼した方が良いでしょう。
会社に逮捕されたことを知られないためには弁護士に相談すべき
逮捕された場合、身柄拘束が長期間にわたり会社に解雇されたり、会社の関係者に知られたりすることによって、人間関係にも影響が及ぶ可能性があります。
弁護士に依頼した場合、早期の釈放等、依頼者が日常生活に戻れるように弁護活動を行ってくれますので、依頼しない場合に比べ、逮捕されたことによって生じるリスクを下げられる可能性があります。
まとめ
今回は逮捕を会社に知られたときのデメリットや、秘密にできるケース等を解説していきました。
刑事事件といっても事案によって最善策はそれぞれで、対応方法も異なります。
また、逮捕されたひと本人やそのご家族が会社に知られないために行えることも限られてきてしまいます。
刑事事件は、逮捕後弁護士に依頼するタイミングによって、今後の人生が大きく左右される可能性があります。
お悩みの方は、ひとりで抱え込まず、警察官に弁護士を呼んでほしいと求めるか、ご家族との一般接見を通じて、刑事事件に精通した弁護士にご相談ください。
この記事の監修者
弁護士法人西村総合法律事務所西村 拓憲弁護士
【所属】大阪弁護士会
府内及び周辺地域の皆様を中心に、質の高い法的サービスをご提供するべく、尽力している事務所です。個人・法人に関係なく様々なご相談を伺い、問題の回避とその解決をサポートしています。
刑事事件でお困りの方、お悩みの方はぜひ当事務所にご相談ください。
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