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【弁護士監修】傷害罪の罰金は最大いくらになるのか?支払わなかった場合のペナルティはあるの?

【弁護士監修】傷害罪の罰金は最大いくらになるのか?支払わなかった場合のペナルティはあるの?

公開日2022/07/08

更新日2022/07/13

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高野隆法律事務所上野 仁平弁護士

傷害事件を起こしてしまった場合、事件の内容によっては罰金刑を科されることがあります。

もし、傷害事件で罰金刑を科されることになれば、最大どれくらいの罰金を支払うことになるのでしょうか。今回は傷害罪の罰金刑について詳しく解説していきます。

【この記事のポイント】

  • 傷害罪で最大いくら罰金を支払わなければいけないのかわかる
  • 傷害罪の罰金を支払わなかった場合どうなるのかがわかる



傷害罪で罰金刑に処されるとどうなるのか?

傷害罪は刑法で懲役刑と罰金刑が定められています。

傷害罪で有罪判決を受け、罰金刑となった場合、最大でどれくらいの金額を支払う必要があるのでしょうか。さっそく確認していきましょう。

傷害罪で罰金刑になった場合、50万円以下の罰金を支払う必要がある

傷害罪で罰金刑となった場合、刑法204条では次のように規定しています。

刑法204条(傷害)

「人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」


上記をご確認いただくとおわかりのとおり、傷害罪は他人にケガを負わせたり、人の健康状態を悪化させたりした場合に問われる罪で、「15年以下の懲役」または「50万円以下の罰金」が科されます。

「15年以下の懲役」や「50万円以下の罰金」は、傷害罪の刑罰の重さ(量刑)の上限を表しています。

実際にどれくらいの懲役刑または罰金刑が科されるかは、被害者のケガの程度や傷害行為の悪質性、示談の有無などを鑑みて、裁判官が判断します。

傷害罪で罰金刑に処される事件は6割を超える

略式起訴は、書面上でのやり取りで審理が行われる裁判手続のことをいい、100万円以下の罰金、もしくは科料が科せられることになります。

検察官が略式起訴にするためには、被疑者に対して「略式起訴にすること」を事前に確認し、被疑者の同意を得る必要があります。

令和3年度版の犯罪白書によれば、傷害事件の略式起訴の割合は総数のおよそ6割を占めています。

つまり、傷害事件で起訴された場合には、半数以上のケースで罰金刑が下されているといえます。

傷害事件(認め事件)の場合、罰金刑が科されるケースが多いことを意識しつつ、不起訴処分を目指すことが可能なのか、事件ごとに慎重に見極めていく必要があります。

傷害罪で罰金を支払わなかった場合どうなるのか

傷害罪で罰金刑を処された場合、罰金の納付方法には選択肢があるのでしょうか。

また、罰金を期日までに支払わなかった場合、ペナルティはあるのでしょうか。

罰金刑は一括納付する必要がある

罰金刑を科された場合、罰金を検察庁へ所定の期間内に一括納付することになります。

納付方法としては、検察庁が指定する金融機関に納付するか、検察庁の窓口(徴収係の窓口)へ直接現金を持って行って納付することになります。

罰金を分割して納付することは原則として認められていません。

所定の期間内に一括で納付できない場合は、納付通知をしている検察庁の「徴収事務担当者」に尋ねるよう求めていますが(検察庁|裁判の執行等について)、実務上の運用としては、徴収事務担当者が分割払いを認めるのは特別な事情がある場合に限られます。

希望者全員が分割払いできるわけではありません。

もっとも、個別事情によっては交渉の余地がありますので、弁護人を通じて粘り強く交渉することも選択肢に入れておくとよいでしょう。

罰金の納付が遅れると労役場留置になる可能性がある

罰金を支払わない、あるいは支払えない場合には、労役場に留置されることになります(刑法18条)。

労役場留置とは、資力がない等の理由により罰金を全て納付できない場合、刑事施設内の労役場に留置して、作業をさせることをいいます。

1日以上2年以内の範囲内で労役場に留置される日数が決められます。

多くの場合、1日あたり5,000円相当と換算されますので、例えば30万円の罰金刑であれば60日間(約2か月間)労役場に留置されることになります。

ただし、罰金の納付が遅れたからといって、いきなり労役場留置になるわけではなく、きちんとした順序があります。

所定の期間内に罰金を納付できない場合、まずは検察庁の徴収事務担当者から罰金を支払うよう督促を受けます。

督促を受けてもなお支払いに応じないときには、罰金を納付しない人が所持する財産に対して強制執行が行われます。

この強制執行で財産を徴収できなかった場合に労役場留置になるのです。

労役場留置が行われている間は、刑事施設内で作業をすることを強いられるため、自由がかなり制限されてしまいます。

親族等にお金を立て替えてもらって罰金を納付したり、検察庁の徴収事務担当者と話し合いをして分割払いに応じてもらうなど、罰金を支払う方法をできる限り模索し、労役場留置を回避できるように行動することが重要です。

傷害罪は罰金刑に処される前に行動すべき

傷害事件を起こした場合、「刑務所に入るのは絶対回避したいけど、罰金なら支払ってもいいや」と考える方も少なからずいらっしゃると思います。

確かに刑務所に収監される懲役刑や禁錮刑に比べると、罰金刑の方が処罰の程度が軽いと感じる方もいるかもしれません。

しかし、罰金刑でも不利益を被ることには変わりません。

できる限り不起訴処分を目指すべきです。その理由として、以下のような理由が考えられます。


①罰金刑で前科がつくのを避ける

②傷害罪の起訴率は約3割であり、起訴を回避することも十分あり得る

理由①罰金刑で前科がつくのを避ける

懲役刑等で前科がつくのは想像しやすいですが、罰金刑は前科がつかないと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

結論からいうと、罰金刑でも裁判手続を経て有罪となっている以上、前科がつきます。

罰金刑はれっきとした刑罰のひとつです。

たとえ書面審査で行う簡略化した略式裁判であっても同様です。

前科を回避するには、検察官が起訴処分(略式を含む)を決定する前に、不起訴処分を得られるような弁護活動をしていく必要があります。

理由②傷害罪の起訴率は約3割であり起訴を回避することも十分可能

日本の刑事裁判の有罪率は約99%です。

起訴されるとかなりの確率で有罪判決が下り、前科がつくことになります。

前科をつけないためには、裁判にならないよう起訴を回避するのが非常に重要です。

検察統計調査によれば、傷害罪の起訴率は約3割 だそうです。

被疑事実を認めている事件も否認している事件も一緒に計算しているため正確なことは言えませんが、傷害事件で捜査を受けたとしても、不起訴処分を得られるケースは十分あるといえるでしょう。

もちろん起こした事件の内容にもよりますが、悪質性が低かったり、被害が軽微なものだったり、被害者側との示談が成立していたりすると、起訴を回避できる可能性が高まるといえます。

無実の場合には、有罪の裏付けとなる証拠がないことや不十分であるという意見を述べ、検察官を説得することも大切です。

傷害罪で捕まったときは弁護士に相談しよう

傷害事件を起こした場合であっても、まずは不起訴処分を獲得するための弁護活動をしていくべきです。

不起訴処分を得やすくするために、被害者との間で示談を成立させ、被害回復をすることや被害者に許してもらうことは重要な要素です。

しかし、加害者や加害者の親族が直接被害者とやり取りして示談を成立させるという方法は現実的ではありません。

被害者が知り合いでない限り示談の交渉をしようにも連絡できませんし、捜査機関も被害者の情報を加害者やその親族に伝えることはまずありませんので、交渉のテーブルに着くこと自体できません。

仮に被害者と連絡が取れたとして、示談交渉では豊富な法知識が必須であることはもちろんのこと、高度な交渉術が必要です。

示談交渉では被害者の感情を逆なでしないように配慮しながらも、加害者側の希望が通るように交渉を行わなければなりません。

当事者間での示談交渉で、「感情」を排除することはおよそ不可能ですから、第三者が交渉に入ることは非常に重要です。

刑事事件の示談交渉は、法律のスペシャリストであり、また交渉術にも長けた弁護士にしかできません。

刑事弁護に精通した弁護士に依頼することで、適切なタイミングで被害者との示談交渉を行うことができ、事件を早期に解決できる可能性が高まります。

まとめ

今回は、傷害罪で罰金刑に処された場合の基本情報や罰金を支払わなかったときのペナルティについて解説しました。

刑事事件は早い段階から対応することで、逮捕等に伴う不利益を最小限にとどめることができます。

お困りの際は、刑事事件に精通した弁護士に相談しましょう。

この記事の監修者

高野隆法律事務所上野 仁平弁護士

【所属】第二東京弁護士会
すべての被疑者や被告人に「最高の弁護」をモットーに日々刑事弁護を行っています。
事案複雑な事件や否認事件でも積極的に弁護活動を行っております。
ご依頼者さまの望む結果を得られるよう尽力いたしますので、お困りの際にはご相談ください。

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