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【物損事故を起こした!】物損事故で当て逃げしたら器物破損の罪になるのか

【物損事故を起こした!】物損事故で当て逃げしたら器物破損の罪になるのか

公開日2023/03/17

更新日2023/07/04

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車やバイクなど車両を運転し、駐車場から出るとき、あるいは交差点に進入するときなどに、誤って他の車や建物などに車両をぶつけてしまうということがあります。

このときに、被害者の方に怪我をさせてしまった場合を人身事故といいますが、被害者の方の物を壊してしまっただけの場合を物損事故といいます。

そして、物損事故を起こしてしまい、その場から逃げてしまうことを当て逃げといいます。この当て逃げについて、刑法上の器物損壊罪を問われるのか、あるいは道路交通法(以下では「道交法」)上の罪に問われるのかについて解説していきます。

【この記事のポイント】

  • 物損事故物損事故で当て逃げするリスクがわかる
  • 物損事故を起こしたときに器物破損で逮捕されるのか確認できる
  • 器物破損しても前科がつかないケースがわかる

物損事故を起こした場合、当て逃げするリスクとは

疲れていたり、考え事をしていたりして注意が散漫になってしまい、物損事故を起こしてしまうこともあるでしょう。

しかし、責任を免れたいという思いから当て逃げをしてしまうと次のようなリスクが生じます。

逮捕される可能性が高くなる

物損事故とは、交通事故により被害者の方の物を壊してしまうことをいいます。

ここでいう「物」とは、車両だけでなく民家の塀や被害者の方のペット(法律上生き物であっても物という扱いを受けます)なども含まれます。

またガードレールや街路樹といった物も対象となります。

物損事故を起こしてしまった場合に成立することが考えられる犯罪としては、刑法上の器物損壊罪、道交法上の犯罪が考えられます。

ただし、器物損壊罪が成立するには前提として、加害者に「被害者が気に食わないから車をぶつけてやろう」といったような罪を犯す意思、つまり故意が認められる必要があります。故意が無い過失犯については処罰の対象にはなりません。

そのため、物損事故を起こしてしまったとしても、被害者の方に迷惑をかけるためにわざとぶつけたという場合を除き、基本的に器物損壊罪は成立しないと考えて良いでしょう。

道交法第72条1項では、交通事故を起こしてしまった者の義務を定めています。

具体的な義務の内容は次の通りです。

 危険防止措置義務

危険防止措置義務とは運転を停止し、道路における危険を防止する等の措置を講じる義務のことをいいます。

危険防止措置義務の具体的な内容としては、さらなる事故の発生を防止するために、発煙筒を焚く、三角表示板を設置するなどして交通誘導を行うことが挙げられます。

警察官に報告する義務(報告義務)

警察官に報告する義務(報告義務)とは、文字通り事故の発生など警察に報告する義務のことです。

具体的に、警察へ報告する内容は以下のようなものになります。

  • 事故が発生した日時や場所
  • 死傷者の数や負傷者の負傷の程度
  • 損壊した物および損壊の程度
  • 事故の当該車両の積載物
  • その事故について講じた措置

なお、人損事故の場合には、上記の義務に加えて、負傷者の救護義務も加えられることになります。

故意に交通事故を起こした場合や道交法上の義務に違反して逃げてしまった場合には、逮捕される可能性が高くなります。

逮捕とは、警察などの捜査機関が被疑者の身体を拘束することを指します。

逮捕は、日本国憲法に保障されている「身体の自由」を奪うことなので、被疑者が逃亡や罪障隠滅を行う可能性が高いなどの相当の理由が無ければなりません。

当て逃げした場合、義務を怠って事故現場から逃げているので、「逃亡のおそれがある」と判断されやすくなります。

最近は防犯カメラが設置されていることも多いため、逃げたとしても後日逮捕されてしまう可能性もあります。

 

被害感情が大きくなり、示談が成立しにくくなる

示談とは、事件の加害者と被害者の方のあいだで行われる民事上の紛争解決のことをいいます。

物損事故を起こしてしまった場合、事故が故意であるものであったかどうかにかかわらず、加害者として被害者の方が受けた損害を賠償しなければなりません。

損害賠償というと、裁判を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、当事者、あるいは代理人間の話し合いで双方が合意し、取り決められるケースも少なくありません。

通常の物損事故の場合、被害者の方が被った損害が軽微なものであれば、被害感情も低く「修理費」や「壊れた物の弁済」で解決できる可能性が高いでしょう。

しかし当て逃げの場合、「逃亡」してしまっているため、被害者の方が持つ加害者に対する不信感などで印象が悪くなり、処罰感情が高くなってしまう可能性があります。

そうなると、話し合いで解決を図ろうとしても双方で折り合いがつかず、示談が成立しづらくなります。

また、仮に示談が成立したとしても、示談金が高額になるなど、内容が加害者側にとってかなり不利な条件になってしまうこともあります。

<H2>器物破損は被害者の方との交渉によって事件化しない可能性が高い

例え、故意に器物破損をしたとしても被害者の方との交渉によって事件化しない可能性が高いです。

<H3>器物破損は告訴が必要となる

まず器物損壊罪は、刑法上親告罪とされています。

親告罪とは、告訴権者(被害者本人やその法定代理人など)が捜査機関に対し、犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示である告訴をしなければ、検察官が起訴できない犯罪のことをいいます。

つまり、故意に当て逃げをしたとしても、示談交渉を成立させ、被害者の方が告訴しないことを示談内容に盛り込むことによって、器物損壊については起訴される可能性がなくなります。

仮に被害者の方が既に告訴していたとしても、検察官が起訴する前に「告訴を取り下げる」といった内容の示談をとりまとめることができれば前科はつきません。

故意に器物破損したとみなさなければ被害者の方との交渉がしやすい

当て逃げで器物破損をしたとしても、故意とみなされなければ罪の成立要件を満たしていないので、被害者の方から告訴されることはありません。

また、道交法の義務に違反したとしても、示談が成立すれば不起訴になる可能性が高いです。

「示談成立は民事的な側面の紛争が解決なので、刑事事件とは別もの」と考えてしまう方もいらっしゃるかもしれません。

刑事責任を追及される場合、不起訴や減軽となるひとつの基準として、被害者の方の処罰感情が強いかどうかが挙げられます。

示談が成立しているということは、被害者の方が加害者を宥恕(ゆうじょ)しているとみなされます。

ただし、示談成立が起訴後になってしまうと、被害者の方の処罰感情がなかったとしても有罪になる可能性が極めて高いので注意が必要です。

物損事故を起こしたら事件化する前に弁護士に相談しよう

物損事故で当て逃げした場合、できるだけ早い段階で弁護士に相談することが大切です。

物損事故を故意に引き起こした場合器物損壊罪と道交法上の罪に問われる可能性があります。

器物損壊罪は、3年以下の懲役または30万円以下の罰金若しくは1000円以上10000円以下の科料が科される可能性があります。

道交法上の罪として、危険防止措置義務違反の場合には1年以下の懲役または10万円以下の罰金、報告義務違反の場合には3か月以下の懲役または5万円以下の罰金という刑事罰が科される可能性があります。

加えて、通常物損事故を起こしてしまったとしても、各義務を果たせば違反点数は加算されませんが、当て逃げをしてしまった場合には7点の違反点数が科されてしまい、これだけでも30日間の免許停止という行政罰を受けることになります。

当て逃げをしてしまった場合の悪影響は、こうした刑事罰、行政罰を受けるというだけにとどまらず、逮捕されるリスクも高まります。

逮捕されると、3日間は家族とも連絡が取れない状態におかれ、取調べを受けることになり、逮捕後の勾留により、長ければ23日間にもわたって身体を拘束されることになります。

こうした逮捕やその後の勾留が与える社会生活上の悪影響、さらには刑事罰や行政罰を受けることによる悪影響を回避するためにも、早期に弁護士に相談し、対応を考えることが必要となるのです。

まとめ

物損事故を起こしてしまった場合に、その場から逃げてしまうと、通常の物損事故に比べ、刑事罰が科せられるなどのリスクが発生し、不利益を被る可能性が高くなります。

とはいえ、事故を起こしてしまった直後は、気が動転して正常な判断ができず、その場から立ち去ってしまうこともあるかもしれません。

後日、警察から連絡が来たような場合には出来るだけ早く弁護士に相談し、事件の解決に向けたアドバイスを受けることが重要です。

この記事の監修者

弁護士法人エースパートナー法律事務所阿野 順一弁護士

■神奈川県弁護士会
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