あおり運転をしてしまった⁉:弁護士による法的対応ガイド
公開日2024/03/21
更新日2024/03/22
カテゴリあおり運転・飲酒運転
秋葉原あやめ法律事務所弁護士 岡島賢太
記事の監修者
「あおり運転のニュースを目にすることがあるが、これまでの自分の運転行為はあおり運転に該当していないだろうか?」
「ついイライラしてあおり運転をしてしまった。自分はこの先どうなってしまうのだろう?」
あおり運転は、社会問題になることもある危険な運転行為であり、時には死傷の結果を招くこともある危険なものです。
また、あおり運転をした場合には道路交通法などに基づき処罰を受けたり運転免許の取り消し・停止などの処分を受けたりすることもあります。
実際にあおり運転を行ってしまった場合はもちろん、自分ではあおり運転ではないと思っていた場合であっても、警察からあおり運転として摘発されてしまった場合には、弁護士に相談して適切に対応することが大切です。
弁護士に相談・依頼すれば、できるだけ軽い処分になるようにあなたのために弁護活動を行ってくれます。
この記事では、あおり運転の定義や罰則、あおり運転をしてしまった場合の対処法などについて解説しています。
あおり運転の定義とは?
「あおり運転」とは、理由もないのに後方や左右から急に極端に車間距離を詰める、執拗に追い掛け回す、前方に回り込んだうえで急停止するなど、さまざまな運転行為によってわざと対象車両の運転を妨害するような悪質・危険な運転行為のことをいいます。
「あおり運転」という言葉そのものは法律用語ではなく、厳密な定義が定められているわけではありません。
しかし、あおり運転のうち一定の行為は道路交通法上の「妨害運転罪」に該当するものとして処罰の対象とされています。また、あおり運転をしたことで運転免許の取り消しや停止の対象になることもあります。
「あおり運転」は、自動車を運転するうえで許されない危険な運転行為として社会生活上広く認知されています。
あおり運転に対する罰則
あおり運転は、単に重大な交通事故の危険を引き起こすだけでなく、犯罪行為として刑事処罰の対象となることもあります。
また、刑事上の処分だけでなく、運転免許取消しといった行政上の処分が下されることもあります。
あおり運転に対して科せられる罰則などについてご説明します。
妨害運転罪
現行の道路交通法では、あおり運転の一部については「妨害運転」と定義づけられ、刑事罰の対象とされています。
道路交通法では、次の10類型の行為が妨害運転罪の処罰対象とされています。
- 対向車線からの接近・逆走(通行区分違反)
- 不要な急ブレーキ(急ブレーキ禁止違反)
- 車間距離を保持せず詰める行為(車間距離不保持)
- 急な進路変更・蛇行運転(進路変更禁止違反)
- 左車線からの追い越し・無理な追い越し(追い越し違反)
- 不必要な継続したハイビーム(減光等義務違反)
- 不必要な反復したクラクション(警音器使用制限違反)
- 急な加減速・幅寄せ(安全運転義務違反)
- 高速道路などでの低速走行(最低速度違反(高速自動車国道))
- 高速道路などでの駐停車(高速自動車国道等駐停車違反)
他の車を妨害する目的で、これら10類型の行為を交通の危険を生じさせるおそれのある方法によって行った場合には、妨害運転罪として3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。
また、違反点数25点が加算され、欠格期間2年の運転免許取消しという行政処分が下されます。
あおり運転によって、実際に交通上の重大な危険を生じさせた場合には、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。
また、違反点数35点が加算され、欠格期間3年間の運転免許取消しという行政処分が下されます。
危険運転致死傷罪
特に危険なあおり運転によって人を死傷させた場合には、「危険運転致死傷罪」が成立するとして同罪で処罰される可能性もあります。
危険運転致死傷罪が成立した場合、人を負傷させた場合には15年以下の懲役、人を死亡させた場合には1年以上20年以下の懲役に処せられます。
これは、妨害運転罪と比べると格段に重い刑事罰です。
暴行罪、傷害罪、脅迫罪など
あおり運転行為が妨害運転罪や危険運転致死傷罪のような犯罪に該当しないとしても、刑法上の暴行罪、傷害罪、脅迫罪などの犯罪が成立するとして処罰の対象となることもあります。
暴行罪が成立する場合には2年以下の懲役または30万円以下の罰金に、傷害罪が成立する場合には15年以下の懲役または50万円以下の罰金に、脅迫罪が成立する場合には2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。
あおり運転で摘発された場合に弁護士に依頼するメリット
あおり運転を行ったとして警察に取り締まられてしまったら、弁護士に弁護活動を依頼することも検討してみましょう。
弁護士に弁護活動を依頼することには、さまざまなメリットがあります。
ここからは、弁護士に弁護活動を依頼するメリットについてご紹介します。
メリット1:「あおり運転をしていない」と主張して弁護してくれる
もしかしたら、あなたの認識としては「あおり運転をしていない」かもしれません。
その場合には、あおり運転による犯罪が成立しないことを弁護活動の中でしっかりと主張してもらうことが大切です。
弁護士に依頼すれば、ドライブレコーダーなどの証拠を収集・確認するなどしてあおり運転による犯罪が成立しない根拠を探し出し、そのことを主張してくれます。
また、たとえ起訴されて刑事裁判になったとしても、依頼した弁護士が弁護人となってあなたの主張を裁判官に伝えてくれます。
刑事裁判では特有の専門的な知識が必要となるため、あなた自身が裁判官に訴えかけるよりも弁護人を通して主張したほうがよりあなたの主張が認められる可能性が高まります。
メリット2:あなたに有利な事情を主張し軽い処分を求めてくれる
たとえあなたがあおり運転を行ったことを認めていても、弁護士に依頼すれば、あなたにとって有利な事情を探し出し、主張し、処分を軽くするように働きかけてくれます。
例えば、相手の車両が先にあなたに激しいあおり運転をしかけてきたのであなたがしかたなく軽くあおり返したなどの事情がある場合には、そのことを正確に捜査機関や裁判所に伝えなければ、あなただけがあおり運転をしたと判断されて不必要に重く処分されてしまう可能性もあります。
弁護人は、あなたから事情を詳しく聴き取り、捜査機関や裁判所にあなたにとって有利な事情をしっかりと伝えてくれます。
これにより、不必要に重い処分が下されることを防げる可能性が高まります。
メリット3:報道機関の取材などに対応してくれる
あなたの行ったあおり運転が社会的な問題となってしまい、報道機関が取材などを行うようになってしまうと、あなただけでは対応し切れないかもしれません。
このような場合に弁護士に依頼しておけば、弁護士が窓口となってあなたの代わりに取材対応などを行ってくれます。
これにより、あなた自身が報道機関の取材を受けるなどの負担が軽減されます。
メリット4:示談交渉を代わりに行ってくれる
あなたがあおり運転を実際に行い、被害者と示談したいと考えている場合には、弁護士に依頼すれば被害者との間の示談交渉を代わりに行ってくれます。
ほとんどの場合、被害者の名前や連絡先についてあおり運転をした側のあなたが知っていることはありません。
このような場合には、警察などの捜査機関から連絡先を教えてもらう必要がありますが、被害者は加害者であるあなたに直接氏名などを教えることを拒絶することがほとんどです。
このような場合でも、弁護士があなたの代理人になっていれば、弁護士限りとして被害者の連絡先を教えてもらえることが多くあり、示談交渉を進めることが可能になります。
被害者との間で示談が成立し、そのことを捜査機関や裁判所に証拠として提出することができれば、あなたに下される処分が軽くなる可能性があります。
あおり運転で弁護士を選ぶにあたって注意したいポイント
あおり運転で弁護士を選ぶにあたっては、注意しておきたいポイントがいくつかあります。
ポイントを押さえて弁護士を選ぶことで、よりよい結果を得ることが可能になります。
ポイント1:刑事事件を多く取り扱っている弁護士を選ぶ
あおり運転で弁護士を選ぶにあたっては、どの弁護士でもいいというわけではありません。
あおり運転は、刑事上の処分が下される可能性も高い行為であり、刑事手続きに精通した弁護士に依頼するほうがより適切な弁護活動を行ってくれる可能性が高いです。
弁護士に依頼する際には、刑事事件を多く取り扱っているかを確認して依頼するとよいでしょう。
なお、弁護士の中には交通事故事件に強いことをアピールしている弁護士もいますが、あおり運転の弁護活動と交通事故被害者の弁護活動とは大きく異なるので、交通事故事件に強い弁護士に依頼したほうがよいということはありません。間違えないようにしましょう。
ポイント2:できるだけ早い段階から弁護士を探す
あおり運転を行ったとして摘発された場合には、できるだけ早い段階から弁護士を探して依頼するべきです。
場合によっては、逮捕されることなく刑事手続きが進み、気がつけば在宅で起訴されていて刑事裁判の段階になっているということもありますが、それでは遅すぎます。
起訴される前の段階から弁護士に依頼しておけば、弁護士が捜査機関に働きかけたり被害者と示談を成立させたりして不起訴処分を獲得することも可能になります。
不起訴処分になれば、刑事裁判を受ける必要はありません。
できるだけ早く弁護士に依頼することでよりよい結果を得られる可能性が高まるので、あおり運転で摘発されたらすぐに弁護士を探すようにしましょう。
あおり運転事件の刑事手続きの流れ
あおり運転を行ってそのことが犯罪として警察に摘発された場合の流れをご紹介します。
ここでは、妨害運転罪を犯した場合(あおり運転を行ったものの交通事故にはならず死傷者も出ていない場合)であって、罪を認めており、在宅で捜査が進み起訴されたケースを例にとってご説明します。
流れ1:警察に呼び出され、事情を聴かれる
あおり運転の被害車両から警察に通報されるなどしてあおり運転があったことが警察に認知されると、警察は捜査を開始します。
警察は、被害者から事情を聴いたり被害車両のドライブレコーダーを確認したりして、あおり運転を行ったのがあなたであることを特定します。
あおり運転を行ったのがあなたであることが特定されると、警察は取調べのためにあなたを警察署に呼び出します。
呼び出しに応じて警察署に出頭すると、妨害運転罪の被疑者として取調べを受けることになります。
取調べは1回で終わることもあれば、何回かにわたることもあります。
この段階の取調べは任意の取調べであり、出頭を拒絶することもできます。
しかし、再三の呼出しに対しても出頭を拒絶し続けると、証拠隠滅や逃亡のおそれなどを理由に逮捕されることもあります。
逮捕されてしまうと、最大23日間にわたって逮捕・勾留という身体拘束が続き、基本的には刑事裁判が終わるまでの間拘束され続けることになります。
逮捕がなされるかどうかで大きく変わるので、可能な限り逮捕がされないようにするべきです。
警察の方針により逮捕がされなければ、在宅のまま捜査が進みます。
在宅のまま捜査が進められる場合には、起訴されるまでの間、あなたが自ら弁護士に依頼しない限り弁護人がつくことはありません。
流れ2:検察官に呼び出され、事情を聴かれる
警察が捜査を遂げたら、証拠などの書類一式を検察官に送付します(いわゆる「書類送検」)。
事件を受け取った検察官は、あらためて直接あなたから事情を聴くためにあなたを呼び出して取調べを行います。
取調べの結果を踏まえて、検察官が起訴するか不起訴にするかの処分を決定します。
この段階で不起訴処分となれば、それで事件は終わりです。
これに対し、起訴処分となれば、刑事裁判を受けることになります。
流れ3:起訴状が届く
起訴されたら、在宅の場合には書留郵便で起訴状が届きます。
起訴状には、どのような行為を行い、それがどのような犯罪に該当するのかなどが記載されています。
起訴状と合わせて、裁判の日時も指定されるため、指定された日時に裁判所に出頭します。
流れ4:刑事裁判にかけられる
刑事裁判では、あなたが起訴状に記載された罪を犯したかどうかが審理され、有罪である場合には科される刑の重さも判断され、判決が言い渡されます。
刑事裁判の場では、まず検察官が訴追した犯罪が成立することを証拠によって証明します。
あなたが弁護人を選任している場合など弁護人がついている場合には、弁護人があなたに有利な事情(示談の成立など)を証明することもあります。
被告人質問という形で、検察官・弁護人・裁判官からあなたに対して質問をする形で話が聴かれるということもなされます。
刑事裁判の最後の段階で、検察官が有罪の立証が十分であることを述べるとともに科すべき刑の意見を述べ(論告・求刑)、弁護人が被告人にとって有利な事情を述べ(弁論)、被告人自身が最後に言っておきたいことを短く述べます(最終陳述)。
罪を犯したことに争いがない場合には、通常は1回の期日でこの段階までの審理が終えられ、次回期日に判決となります。
判決期日では、裁判官が被告人に対して科すべき刑を言い渡します。
前科がなく犯した罪の重さもそれほど重くなく被告人が十分に反省しているなど、一定の場合には、執行猶予付き判決が下され、すぐに刑務所に行く必要はないこととされることもあります。
しかし、直近に前科があるなど執行猶予を付すことが法律上許されない場合には、実刑判決が下され、刑務所に服役しなければならないこともあります。
刑務所への服役を回避するためには、執行猶予付きの判決を得ることが不可欠です。
このためにも、信頼できる弁護人を依頼・選任して十分な弁護活動を尽くしてもらうことはとても重要であるといえます。
まとめ:あおり運転で摘発されたらすぐに弁護士に相談・依頼を
あおり運転は、死傷の結果を伴う事故を引き起こしかねない危険な運転行為です。
あおり運転は社会的にも問題になっており、あおり運転を行えば道路交通法や刑法などの法律により刑事処罰の対象となることもあります。
また、長期間の運転免許取消し処分が下されるなど、重い行政上の処分が課されることもあります。
あおり運転で摘発された場合には、すぐに弁護士に相談・依頼することが大切です。
できるだけ早く弁護士に依頼することで、あなたがあおり運転で重く処罰されることを回避できる可能性を高めることができます。
また、あなたの言い分を捜査機関や裁判所によりよく伝えることも可能になります。
あおり運転の弁護活動を依頼する際には、刑事事件を多く取り扱う弁護士に依頼することが重要です。
弁護士によって得意としている分野が分かれており、刑事罰の対象となるあおり運転の弁護活動は刑事事件を多く取り扱う弁護士に依頼することが最も適切です。
もしあなたがあおり運転を行ってしまったのであれば、そのことをなかったことにすることはできません。
しかし、これから先をどう動くかは今のあなたが決めることができます。
刑事弁護に強い弁護士に相談・依頼し、解決に向けての第一歩を踏み出しましょう。
この記事の監修者
秋葉原あやめ法律事務所弁護士 岡島賢太
第二東京弁護士会所属
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