家族が窃盗罪で逮捕された | その後の流れと保釈と釈放
公開日2023/08/10
カテゴリ万引き・窃盗罪
突然警察から電話があり、家族が窃盗罪で逮捕されたと言われたら動揺し、どう対応すればよいのかわからないという方が多いと思います。
ここではそもそも窃盗とはどういった犯罪であるかという点から、逮捕後の流れ、そして弁護士の探し方まで詳しく解説します。
窃盗罪とは
まずは窃盗罪がどういった犯罪なのか、そしてどういった刑罰を受けるおそれがあるのかについてみていきます。
窃盗罪が成立する場合
窃盗罪について刑法235条は「他人の財物を窃取した者」としています。
そのため「他人の財物であること」、そして「窃取したこと」が、窃盗罪が成立するための要件となります。
「他人の財物」というのは、他人が占有する、つまり事実上支配下においている物ということを意味しています。
手に持っている物、すぐそばに置いている物、さらには自宅に置いている物などがこれにあたります。
また242条は、自己の財物であっても他人が占有していれば他人の物とみなすとしているため、他の人に貸している物を無断で取り返すことなどの行為も窃盗罪の対象となります。
「窃取した」というのは、占有者の意思に反して自己の占有下に移すこと、つまり無理やり奪ったり、相手が知らないうちに盗んだりするということになります。
この窃盗罪にあたる代表的なケースとしては、ひったくりや万引き、住居侵入窃盗などがあります。
窃盗罪の刑罰
窃盗罪の刑罰については、10年以下の懲役または50万円以下の罰金とされています。
「または」という言葉でつながれていることから、これらのいずれか一方を刑罰として科されることになります。
懲役とは、刑務所といった刑事施設に収容され、刑務作業を行うという刑罰になります。
懲役と同様に身体の自由を奪う刑罰として禁錮もありますが、禁錮の場合には刑務作業を行わないという点で違いがあります。
罰金とは、1万円以上の金銭の納付を強制される刑罰となります。
罰金と同様に金銭の納付を求められる刑罰として科料もありますが、科料は1000円以上1万円未満であり、金額の点で違いがあります。
窃盗で逮捕される場合とは
ここからは窃盗で逮捕が認められる条件と具体的なケースについてみていきます。
逮捕の法律的条件
逮捕には、現行犯逮捕、通常逮捕、緊急逮捕の3種類があり、それぞれ条件が異なります。
まず、現行犯逮捕は、犯罪がなされたその時点や直後の時点において、誰でもすることができる逮捕となります。
条件としては犯罪の瞬間を目撃していることとなり、犯行の後、犯人が被害者などに追われている場合には準現行犯逮捕として認められることもあります。
通常逮捕は、警察官などが逮捕状を裁判所に請求し、発付された逮捕状によって逮捕するものとなります。
条件としては逮捕の理由と逮捕する必要性があることです。
逮捕の理由とは、罪を犯したと疑うに足りる相当の理由、つまり、被疑者(俗にいう容疑者)が犯罪をしたと客観的・合理的に疑われることをいいます。
そして逮捕する必要性とは、被疑者の住所がわからない場合、逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合をいいます。
緊急逮捕は、一定の重大な犯罪について、通常逮捕で必要とされる以上の逮捕の理由があり、かつ、逮捕状を請求する余裕がない場合であることを条件として、現行犯逮捕と同様に令状なしでの逮捕を認めるものです。
窃盗罪で逮捕されるケースとは
窃盗罪では、上記の3種類の逮捕のいずれも起こり得ます。
万引きやひったくりの場合には、それを目撃した店員などによって現行犯逮捕されるというケースが考えられます。
また、犯罪の後に防犯カメラの映像などから被疑者として特定され、通常逮捕されるというケースも考えられます。
窃盗は緊急逮捕の対象となる重大な犯罪であるため、犯罪の目撃者の話から手配がなされ、警戒中の警察官らによって緊急逮捕されるケースもあります。
窃盗で逮捕された場合の流れ
ここからは窃盗で逮捕された場合におけるその後の流れについてみていきます。
立件(逮捕)
立件という言葉は法律上の言葉ではなく、報道での用いられ方も、警察の捜査の開始や、逮捕、検察官の起訴など、ばらつきがあります。
ここでは、逮捕を指すものとして考えます。
まず、立件、つまり逮捕されると、警察によって最大48時間身柄を拘束され、その後検察に送られると(これを送検といいます。)、検察によって最大24時間の身柄拘束を受けることになります。
この間は、家族であっても面会することができず、弁護士だけが面会することができることになります。
勾留請求
検察官は身柄を引き取ってから被疑者を釈放するか、さらに身柄拘束を続けるか判断します。
さらなる身柄拘束を行うことを勾留といい、勾留が認められるか否か裁判所が判断することになっています。
この勾留をするために裁判所に許可を求める手続が勾留請求となります。
勾留
勾留の期間は原則10日間とされ、窃盗の場合には最長10日以内の範囲で勾留延長が認められているため、合わせて最長20日間となります。
起訴
勾留期間が終わるまでに、検察官は被疑者を刑事裁判によって刑罰を科すよう裁判所に求めるために起訴するか、釈放するか判断します。
起訴された場合には、刑事裁判を受けることになりますが、その際には被疑者から被告人へと呼び方が変わり、そのまま被告人勾留としてさらに身体拘束が継続され、保釈が認められない限り、警察署や拘置所に留まることになります。
また、比較的軽微な事案では、略式起訴といって、被疑者が同意すれば書類上の手続だけで罰金刑が科されることがあります。その場合は、略式起訴の当日に帰宅することができ、後日罰金を納付することになります。
公判
公判とは刑事裁判の手続のうち、裁判所において裁判官や検察官、被告人が出席し、公開した場の法廷で審理を行うことをいいます。
公判は基本的には複数回行われ、冒頭陳述などから構成される冒頭手続から始まり、証拠調手続、論告・弁論手続と進んでいくことになります。
弁論手続が終わると結審し、判決を待つことになります。
判決
判決とは、事件に対して裁判所が示す判断であり、有罪あるいは無罪という判決が下されることになります。
有罪判決が下された場合には、それとともに科される刑罰が言い渡されることとなり、無罪判決の場合にはそのまま釈放されることになります。
保釈と釈放
逮捕や勾留は身柄を拘束され、また本人が外部と直接連絡を取ることが困難になるため、悪影響が非常に大きい処分となります。
これらの身柄拘束からの解放として保釈と釈放があります。
ここからは保釈と釈放について見ていきます。
保釈
保釈とは、起訴後の被告人勾留によって身柄拘束されている被告人を、保釈保証金という金銭の納付を条件として身柄を解放することをいいます。
保釈に至る流れは、保釈の申請を行い、裁判官が検察官の意見を聞いた上で、保釈を認める否かの判断がなされ、決められた保釈保証金を納付し、保釈されます。
釈放
保釈と似た言葉として、釈放があります。
これは、逮捕や勾留など、手続の各段階でなされる身柄解放一般を指す言葉です。
具体的には、逮捕後に微罪処分となった場合や、在宅事件として処理されることになった場合、勾留に対する不服申立て(準抗告といいます。)が認められた場合、無罪判決や執行猶予付き判決を受けた場合などがあります。
窃盗で逮捕された場合のリスク
ここまでは窃盗罪の知識や逮捕の流れについてみてきましたが、ここでは窃盗で逮捕されてしまった場合のリスクについて、個別に解説していきます。
家族や職場・学校などに知られてしまう
逮捕されてしまったときに警察が家族に連絡することがあります。
また、警察から家族への連絡がなかったとしても、最大3日間は本人が外部との連絡を取ることができなくなってしまうため、不審に思った家族の側が警察などに連絡を取り、発覚してしまうこともあります。
加えて、本人の自由が奪われてしまい、外部との連絡も取れなくなることから、職場や学校に行くことはできなくなります。
特に勾留されてしまった場合にはより長期の身柄拘束が想定され、職場や学校に隠し続けることは困難となります。
職場を解雇される可能性がある
多くの企業は、会社の名誉や信用を毀損した場合などには懲戒処分の対象となるという就業規則を設けています。
逮捕されてしまった場合には、報道されて会社の名誉や信用を害したり、無断欠勤に該当したりしてしまうこともあるため、就業規則の懲戒処分の対象として、解雇されてしまうこともあります。
報道される場合もある
逮捕されてしまった場合には、マスコミの報道の対象となることがあります。
未成年の場合には少年法により実名報道はされないことになっていますが、成人の場合には実名で、しかも勤め先までもが報道の対象となるおそれがあります。
実名報道までされる基準はありませんが、実名報道や職場まで報道されてしまうと、解雇などのリスクも高くなります。
窃盗で逮捕されないためのポイント
窃盗で逮捕されないためのポイントとしては、捜査の対象となった場合に速やかに弁護士に対応を相談し、捜査機関の捜査に誠実に応じることです。
逮捕は、逮捕の理由とともに逮捕する必要がある場合、つまり逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合にしか認められないこととなっています。
警察から任意での取り調べを要請されたときなど、捜査に誠実に応じることが、逮捕の必要がないという判断につながります。
弁護士に相談することも効果的です。
弁護士に相談することによって、警察とは別で証拠収集を行い、被疑者に有利な証拠を示すなどすることで、逮捕しないように働きかけてもらうことができます。
また、取り調べに対してどのような対応をすればよいか的確なアドバイスをしてもらえることも期待できます。
窃盗事件の弁護士の役割と重要性
刑事事件では弁護士へ相談することが重要といわれることがあります。
ここでは窃盗事件で弁護士が果たす役割、そしてその重要性についてみていきます。
窃盗罪で前科を付けずに済む方法
窃盗事件では有罪判決を受けると前科が付いてしまいます。
そのため、前科を付けないようにすることが重要となります。
前科を付けないようにするためには、不起訴処分を得ることが必要となります。
これは、日本の刑事事件での有罪率が99%以上であるため、起訴されてしまうとほぼ確実に有罪となってしまうためです。
不起訴処分には嫌疑なし、嫌疑不十分、起訴猶予の3つがあります。
この状態にするための方法としては、被疑者に有利な証拠収集を行い、嫌疑がない、もしくは不十分であると主張することが考えられます。
また、被害者との示談を成立させるなどして被害を賠償し、反省を示して起訴猶予を求めることも考えられます。
これらの主張の際に、証拠収集は被疑者個人では難しい場面も多く、弁護士であれば弁護士会を通じた照会などができることもメリットとしてあります。
そして、示談交渉では、弁護士を代理人としなければ交渉に応じないという被害者の方もいるため、このような場合に代理人として対応してもらうこともできます。
弁護士に相談する方法
これまでに弁護士に相談したことがないという方は、どうやって弁護士を探したらよいのかわからないということもあるでしょう。
ここでは、弁護士に相談する方法についてみていきます。
弁護士紹介ポータルサイトで探す
まず考えられる方法としては、ポータルサイトを用いて探すということがあります。
GoogleやYahoo!といった検索エンジンを利用すると、その地域で活動する弁護士や刑事事件を強みとする弁護士を探し出すことができます。
被疑者本人だけでなく、家族が弁護士に刑事弁護を依頼して、弁護士に被疑者の接見に行ってもらうことも可能です。
弁護士会の刑事当番弁護士制度を利用する
逮捕された場合に、被疑者本人が相談できる弁護士として当番弁護士がいます。
当番弁護士は、逮捕された人が、1回のみ無料で弁護士を呼んで相談することができるという制度です。
警察官や検察官に、当番弁護士を呼んでほしいと伝えるだけで利用でき、その弁護士に継続して弁護活動を依頼することもできるという特徴があります。
国選弁護人の選任を待つ
国選弁護人を利用することも1つの方法となります。
国選弁護人は被疑者段階と被告人段階の2種類があります。
被疑者国選弁護人は逮捕時では依頼することができず、勾留されて初めて依頼することができるようになっています。
また、勾留後に起訴された場合、被疑者国選弁護人から被告人国選弁護人に移行し、引き続き弁護活動が継続されます。
被疑者国選弁護、被告人国選弁護制度を利用するためには、原則として資力が50万円以下であることという要件を満たしていなければなりません。
例外としては窃盗事件のように必要的国選弁護事件の場合には、弁護人がいなければ刑事裁判を行うことができないとされています。
そのため、必要的弁護事件で弁護人が選任されていないときには裁判所が選任することになります。
この場合には例外的に資力は問われないこととなります。
まとめ
家族が窃盗罪で逮捕されてしまった場合には、できるだけ冷静になって対応する必要があります。
逮捕が長引くほど、大きな悪影響を及ぼすこともあるため、弁護士への相談を含めて、素早くかつ適切な対応を検討しましょう。
この記事の監修者
弁護士法人エースパートナー法律事務所市川 知明弁護士
■神奈川県弁護士会
刑事事件は、いつ弁護士に依頼するかによって、対応の幅が変わったり、不起訴処分や減軽の可能性が高くなったりします。
弁護士法人エースパートナー法律事務所は、逮捕段階・勾留段階、逮捕前のご相談も受け付けております。
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