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痴漢逮捕ガイド:逮捕後の流れと早期解決のためのアプローチについて

痴漢逮捕ガイド:逮捕後の流れと早期解決のためのアプローチについて

公開日2023/09/01

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身の回りで痴漢を目撃した、あるいは被害にあった方を知っているという人も少なくないのではないでしょうか。

痴漢が身近な犯罪であるということは、その疑いが自身にかけられてしまうおそれもあるということでもあります。

ここからは、痴漢の疑いで逮捕されてしまった場合の流れや解決方法について解説していきます。

痴漢逮捕の種類

まずは痴漢の種類についてみていきます。

現行犯逮捕と後日逮捕

痴漢の疑いでされる逮捕は、主に(準)現行犯逮捕通常逮捕の2種類です。

(準)現行犯逮捕は、犯罪の瞬間やその直後を目撃した人がする逮捕で、警察官などに限らず誰でも逮捕することができます。

痴漢では、被害者本人や周囲の人が、痴漢の現場でこの(準)現行犯逮捕をすることが多くなっています。

そして、通常逮捕は、逮捕状によって逮捕することで、犯行の後日に自宅や職場を出たところで逮捕されることが多く、後日逮捕と呼ばれることもあります。

犯行後に逃亡し、防犯カメラの映像などから犯人が判明した場合には、この通常逮捕によって逮捕されることがあります。

不安なら弁護士へ相談を

痴漢の疑いで逮捕されてしまったときは、できるだけ早く弁護士に相談することが大切です。

逮捕されてしまった場合、家族などと連絡を取ることができなくなり、取り調べには1人で応じなければならず、本人が感じる不安は非常に大きいものとなります。

手続きを教えてもらうアドバイスをもらう家族との連絡を仲介してもらうなど、弁護士の役割は様々であり、不安を少しでも解消することが本人にとって不可欠です。

痴漢で逮捕された場合の流れ

ここでは、痴漢で逮捕されてしまった場合に、どういった流れで手続きが進んでいくのかについてみていきます。

逮捕から起訴・不起訴決定までの流れ

逮捕された場合には、被疑者(容疑者)の身柄を拘束され、まずは警察による取り調べを受けることになります。

警察による取り調べを終えると、身柄と資料が検察に送られ(これを送検といいます)、今度は検察による取り調べを受けることになります。

そして、検察は被疑者を釈放するか勾留するか判断します。

逮捕から送検までが48時間以内、そして送検後勾留の要否を判断するまでが24時間以内、合わせて最長72時間、逮捕によって身柄を拘束されることになります。

検察が被疑者の身柄拘束を継続して勾留をしようとする場合には、裁判所に勾留請求することになります。

勾留は原則10日間で、さらに追加で10日以内の勾留延長されることがあります。

勾留と勾留延長を合わせて最長20日の間に、検察官は被疑者を起訴するか不起訴とするかの判断をします。

不起訴となった場合には、釈放されることになりますが、起訴された場合には保釈が認められない限り、被告人勾留として身柄拘束が継続されることになります。

痴漢で問われる罪名と刑罰

ここでは、痴漢の場合に問われうる犯罪について解説していきます。

迷惑防止条例違反と不同意わいせつ罪の違い

痴漢の場合に問われうる犯罪としては、各都道府県が制定する迷惑行為防止条例違反と、刑法上の不同意わいせつ罪があります。

迷惑行為防止条例は各都道府県が制定する条例であるため、その都道府県によって内容が異なります。

東京都の場合には5条1項で「公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること」を禁止しています。

つまり、バスや地下鉄の車内などにおいて、故意に身体に触れることが条例違反としての痴漢にあたります。

これに対して、不同意わいせつ罪は、以前は強制わいせつ罪とされていた犯罪で、より類型的に、そして詳細に定義をしたもので、令和5年7月13日から施行されています。

暴行や脅迫、アルコールの影響などの8項目のいずれかを原因として、被害者の方の同意がない、または同意が得られない状況でわいせつな行為することが不同意わいせつ罪の成立要件となります。

そして、被害者の方が16歳未満である場合、そして被害者の方が13歳以上16歳未満であって加害者が被害者よりも5歳以上年長である場合には、同意の有無にかかわらず、不同意性交罪が成立することになります。

また、ここでのわいせつ行為とは、体の接触やキスなどによって性欲を刺激するような行為をいいます。

実務上は、単に衣服の上から触った場合には条例違反衣服や下着の中にまで手を入れた場合には不同意わいせつ罪といった適用が多くなっています。

刑罰の範囲

刑罰について、迷惑防止条例の刑罰は都道府県ごとに異なっています。

東京など41都道府県では6か月以下の懲役または50万円以下の罰金常習者の場合にはより重く1年以下の懲役または100万円以下の罰金となっています。

しかし、栃木県、群馬県、神奈川県、愛知県、三重県、和歌山県の6県については、1年以下の懲役または100万円以下の罰金常習者の場合には2年以下の懲役または100万円以下の罰金と、他の都道府県よりも重い処罰となっています。

不同意わいせつ罪は、刑法上の犯罪であるため全国一律の刑罰であり、6か月以上10年以下の懲役となっています。

痴漢逮捕で生じる問題

ここでは、痴漢の疑いで逮捕された場合にどういった問題が生じるのかについて解説していきます。

前科の影響

痴漢を含む刑事事件一般で、最も問題になるのが、前科が付いてしまうということになります。

前科とは、定まった定義があるわけではありませんが、一般には、刑事事件で有罪判決を受けたことをいいます。

この有罪判決には、懲役や禁錮から執行猶予付き判決、そして罰金や科料までもが含まれることになります。

この前科が付いてしまうと、警察や検察、市町村のデータベースに情報として残ってしまうことになり、前科があることで会社を解雇されたり就職活動で不利になることもあります。

また、前科があると、同じ犯罪を再び起こしてしまった場合に、常習者として扱われてしまうことになり、不利に扱われてしまうおそれがあります。

会社との関わり

多くの会社は、会社の名誉や信用を毀損した場合に、懲戒処分にするという就業規則を設けています。

逮捕されてしまった場合には、勤め先である会社名を含めて報道されてしまうこともあり、就業規則の懲戒処分の対象となることがあります。

懲戒処分では、減給や降格、場合によっては解雇されてしまうこともあります。

メディア報道の影響

逮捕されてしまった場合には、メディアで報道されてしまうことがあります。

少年法は、未成年の実名報道を禁止していますが、成人の場合には実名報道が可能であり、勤め先まで報道されるおそれがあります。

実名報道をされる基準はありませんが、実名報道された場合には、周囲の人や会社に知られてしまうおそれがあります。

痴漢逮捕後に不起訴となるためのポイント

ここでは、痴漢の疑いで逮捕されてしまった場合に、前科がつかない不起訴処分を得るためのポイントについてみていきます。

不起訴処分は、被疑者の無実が明らかとなった場合の嫌疑なし被疑者に疑いはあるが確証が得られなかった場合の嫌疑不十分、そして反省をしているなど情状によって起訴の必要がないと判断された場合の起訴猶予の3つに分けられます。

そのため、無実である場合にはその旨を証明し、嫌疑なし、あるいは嫌疑不十分という判断を求めることになります。

具体的には、警察の繊維鑑定などの捜査に協力する、あるいは防犯カメラの映像を分析するなどして、犯行をしていないといったことを主張することになります。

また罪を認める場合には、被害者の方との示談交渉を進めるなどして、反省し、被害者の方への賠償をして起訴が不要であると主張することになります。

家族が痴漢で逮捕された場合の対処法

家族が逮捕されてしまった場合、弁護士に相談することがもっとも重要となります。

弁護士に相談する重要性

家族としてできることとして、まずは弁護士に相談することが考えられます。

逮捕されると身柄が拘束されてしまうと同時にスマートフォンなども警察に取り上げられてしまい、被疑者本人では弁護士を探すということは困難になります。

刑事事件では、その専門性の高さもあり、刑事事件を強みとする弁護士の協力が問題解決の近道となります。

家族であればインターネットなどで弁護士を探すことができ、刑事事件に強い弁護士に相談することができます。

弁護士相談の利点

ここでは弁護士に相談した場合にどのような利点があるのかについて、詳しく見ていきます。

早期釈放の支援

逮捕されてしまった場合、その後の勾留も合わせると、最長23日間にもわたって身柄が拘束されてしまうおそれがあります。

身柄拘束中は会社に出勤することも、学校に登校することもできないため、大きな悪影響が生じかねません。

この悪影響を最小限に抑えるためには、できるだけ早い段階で釈放されることが不可欠となります。

弁護士に依頼した場合には、弁護士だけができる弁護士会照会による証拠収集現地調査聞き込みなどの方法により、無実であることを示す証拠収集や情状に関しての証拠収集をスムーズに行うことができます。

また、弁護士を代理人として立てなければ、交渉に応じてもらえないこともある示談交渉についても、適切な内容で示談成立をさせることが期待でき、情状の資料とすることができます。

こうした証拠収集などによって、弁護士は勾留や勾留延長の必要がないこと、起訴する必要がないことを主張し、釈放を求めていくことになります。

示談交渉と不起訴の可能性

刑事事件では、国が被疑者の責任を追及するという刑事上の側面と、被害者の方が損害賠償請求などによって被疑者の責任を追及するという民事上の側面があります。

後者の民事上の側面について、紛争を解決することが示談となります。

示談交渉は、被害者の方が被害届や告訴を取り下げ被疑者を許してもらうことまでを目的とします。

これによって被害者の方の処罰感情がないとされ、検察が起訴して裁判所に処罰を求める必要性が減少することになり、不起訴になる可能性が高まります。

刑事処分軽減の道筋

刑事処分を軽減するためには、被害者との示談を成立させること、そして再犯防止に向けた取り組みをすることが効果的です。

示談成立には被害者の方の処罰感情の軽減する効果があります。

これにより、量刑面での有利な判断が期待できます。

また、再犯のおそれがあると考えられてしまうと、その抑止のためにも重い量刑判断をされる可能性があります。

そのため、再犯防止のために通院を開始するなどすることで情状により、量刑の減軽が期待できます。

いずれの道筋においても、弁護士に相談することで示談交渉を円滑に進めることができ、弁護士によっては専門の医療機関の紹介を受けることもできます。

証拠収集と助言の役割

刑事事件では、証拠収集が大きな意味を持ちます。

収集された証拠によって、無実を主張する、あるいは情状の資料とすることで、不起訴処分や量刑面での有利な判断を得やすくなるためです。

この証拠収集にあたって、弁護士であれば、弁護士会照会という法律で認められた制度を利用し、素早くより多くの証拠を収集することができます。

また、捜査機関の取り調べにおいては、被疑者本人が1人で応じなければなりません。

取り調べにおいて注意すべきことはなにか、不利にならないようにするためにどういった対応を取るべきかといった事件ごとの事情に応じた適切な助言は、弁護士にしかできません。

痴漢冤罪への対処法

ここでは、痴漢の疑いをかけられたが、冤罪である場合にどういった対処をすればよいかについてみていきます。

逃げずに対応する

痴漢冤罪の疑いをかけられてしまった場合に、最も不適切な対応は逃げてしまうことになります。

一度逃げてしまうと、逃亡のおそれがあるとして逮捕や勾留といった悪影響の大きい処分を受ける可能性が高くなってしまいます。

また、自身が無実であるという証拠も時間とともに失われていくため、逃げてしまうと自身に有利な証拠も集めにくくなってしまいます。

そのため、落ち着いて自身の無実を証明するべく、繊維鑑定などの捜査に協力することが欠かせません。

逮捕までの適切な対応

痴漢冤罪で逮捕されてしまうまでの適切な対応は、誠実に、そして無実であることを主張することとなります。

不誠実な対応をとってしまうと、心証が悪くなり、悪い判断をされてしまうことになりかねません。

また、後述の通り、無実であることをはっきりと伝えなければ、被害者の方や駅員などに誤った先入観を抱かせてしまうことにもなりかねません。

加えて、逮捕されてしまうと、被疑者本人が他の人に連絡する手段が失われてしまうため、逮捕されるまでに家族や弁護士などに連絡を入れておいた方がよいでしょう。

「とりあえず謝る」はNG!

痴漢冤罪の疑いをかけられてしまった場合に、よくあるケースがとりあえず謝ってしまうというものです。

穏便に済ませるためにとった行動だとしても、謝ってしまうと、自分の罪を認めていると捉えられてしまうこともあります。

特に、犯行直後の発言は証拠として重視されやすい傾向もあるため、しっかりと痴漢を否認するというのも一つの考え方です。

ただ、警察や検察は取調べのプロですので、容疑を否認したとしても、彼らのペースで話を進められ、自分の意図していない形でこちらの言い分を受け取られてしまう危険性がありますし、こちらの言い分を否定するための証拠集めをされる危険性もあります。

被疑者には「黙秘権」といって、捜査中ずっと黙っている権利が保障されています。

「悪人が黙秘するなんて許せない!」と言われがちな黙秘権ですが、冤罪をかけられた被疑者を守る重要な武器なのです。

容疑を否認して自分の言い分をしっかりと伝えるのか、それとも黙秘権を行使するのか、依頼した弁護士とよく相談することをお勧めします。

弁護士に依頼

痴漢冤罪の場合でも弁護士に依頼することは重要です。

早期の依頼は、逮捕や勾留を事前に防ぎ、身柄拘束の期間を短くすることにつながります。

また、対処法についても、その場の状況に応じた適切な助言を得ることもできます。

まとめ

痴漢は身近な犯罪ではありますが、トラブルになってしまうと今後の人生に非常に大きな悪影響をもたらしかねません。

トラブルになってしまった場合には、早期の解決に向けて、弁護士に相談するなど、適切な対応を取りましょう。

この記事の監修者

弁護士法人エースパートナー法律事務所市川 知明弁護士

■神奈川県弁護士会
刑事事件は、いつ弁護士に依頼するかによって、対応の幅が変わったり、不起訴処分や減軽の可能性が高くなったりします。
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